2019-07-07

相続税の計算方法は難しくない!実際の例にのっとって丁寧に解説します

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相続税の計算方法は難しくない!実際の例にのっとって丁寧に解説します

この記事の目次

相続税の計算方法をご存じですか?

あるいは、大した資産もない家柄だから相続税なんて関係ないと考えていませんか?

しかし、相続税は全財産の総額にかかってくる税金で、制度も複雑。

つまり、負債や借金なども遺産として計算されるうえに相続放棄の期限もたった3か月しかなく、あとに残す家族を困らせてしまうことも考えられます。

そこで今回は、終活を考えていらっしゃる方に向けて、相続税の計算方法や実際に相続税を計算するためのコツなどをご紹介します。

ややこしい相続税のイメージを少しでも払拭して、前向きに終活に取り組みましょう。

 

相続税の計算方法を具体的にご紹介

さっそく、相続税の計算方法を実際の例にのっとって見ていきましょう。

夫・妻・長男・長女の4人家族で、亡くなった夫の遺産総額が8,800万円だった場合、どうなるのでしょうか?

相続税の計算は、4つの手順で行います。

  1. 遺産総額(課税価格)を算出する

  2. 相続税の基礎控除額を差し引いて課税対象額を算出する

  3. 法定相続分に基づき各法定相続人の相続税額を算出、それらを合計する

  4. 相続税総額を実際の相続分で按分する

少し複雑な計算になりますが、順に詳しくご紹介していきます。

 

ステップ1.遺産総額(課税価格)を算出する

遺産総額を把握しなければ、相続税の計算を行うことができません。

遺産とは、被相続人(亡くなった人)が所有していた現金・預貯金、株式や債券等の有価証券、土地・建物等の不動産、書画骨董等のすべての財産のことを指します。

遺産の総額を把握するのは大変ですが、ここではひとまず遺産総額を8,800万円とします。

 

ステップ2.遺産総額から基礎控除額を差し引いて課税対象額を算出する

相続税には基礎控除額があり、遺産総額から基礎控除額を差し引いて課税対象額を計算します。

相続税の基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人)」で算出できます。

 

基礎控除額

法定相続人

基礎控除額

1人

3,600万円

2人

4,200万円

3人

4,800万円

4人

5,400万円

5人

6,000万円

 

ここでは法定相続人が妻・長男・長女の3人なので、基礎控除額は4800万円です。

遺産総額8,800万円-基礎控除4,800万円=課税対象額4,000万円

この4,000万円が、課税対象額となります。

 

ステップ3.法定相続分に基づき各法定相続人の相続税額を算出、それらを合計する

ステップ2で計算した4,000万円を法定相続分で按分すると、課税標準額が割り出せます。

被相続人(亡くなった方)に配偶者と子どもがいる場合の法定相続人と法定相続分

法定相続人

法定相続分

配偶者、子

配偶者が1/2

子が1/2(子が2人なら1/4ずつ)

そこに、それぞれの課税標準額に応じた税率をかけて、相続税の総額を算出します。

 

・妻の税額

(4,000万円÷ 2 ) × 15%(税率)50万円(控除額) = 250万円

 

・長男の税額

(4,000万円 ÷ 4 ) × 10%(税率) = 100万円

 

・次男の税額

(4,000万円 ÷ 4 ) × 10%(税率) = 100万円

 

合計 250万円 + 100万円 + 100万円 = 450万円(相続税の総額)

 

※上記の計算式の税率、控除額は以下のように定められています。

課税標準額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

なし

3,000万円以下

15%

50万円

5,000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

3億円以下

40%

1,700万円

3億円超

50%

4,700万円

 

4.相続税総額を実際の取得割合で按分する

相続税の総額450万円を、それぞれの取得割合で分配します。

 

・妻の税額  450万円 ÷ 2 (実際に相続する割合) = 225万円

・長男の税額 450万円 ÷ 4 (実際に相続する割合) = 112.5万円

・次男の税額 450万円 ÷ 4 (実際に相続する割合) = 112.5万円

 

よって、相続税は妻が225万円、長男・次男がそれぞれ112.5万円ずつ負担することになります。

ただし、今回の場合の配偶者である妻は、配偶者控除を利用することによって、相続税を全額控除することが可能です。

 

配偶者は【配偶者控除】が受けられる

配偶者は、配偶者控除の申請をすることで法定相続分の相続税を控除することができます。

また、法定相続分を超える分についても1億6千万円までは控除を受けられます。

申請できるのは、夫婦のどちらか一方が亡くなって、その配偶者が遺産を相続することになった場合です。

配偶者の老後の生活保障や、大きな富を築き上げるうえで重大な役割を果たした夫婦の協力に配慮しての制度なので、例外的に大きな控除となっています。

 

遺産総額を把握するためのポイント

ここまでは相続税の計算方法をご紹介してきました。

数字だけを追っている分にはそう難しくありませんが、実際にやろうと思うと困難が数多く存在します。

まずはじめに、相続税の計算をする前に遺産総額をすべて把握しなければなりません。

すでにご紹介した通り、遺産とは被相続人が所有していたすべての財産のことです。

しかし、実際には、亡くなったことによって入ってくる死亡保険金や死亡退職金などの「みなし相続財産」、相続開始3年以内に贈与された財産のほか、相続時精算課税制度を適用して贈与された財産も遺産として含まれます。

ここから、非課税の財産、債務、お葬式費用(300万円まで)、基礎控除額などが差し引かれたものが遺産総額となり、ここまでして初めて相続税の計算を始めることができるのです。

ですので、ここでは遺産総額を把握するうえで重要なポイントをご紹介します。

 

注意すべき見逃しがちな遺産

知らずに所有している土地や建物があったり、些細なように思える遺産も思わぬ市場価値を持っていて相続税がかかったりする場合があるため注意が必要です。

 

不動産

意外と知らないところで土地・建物を所持していることがあります。

たとえば、共有の不動産で固定資産税の通知書が故人のもとへ届いていない場合や、山林や原野などで固定資産税評価額が低く、固定資産税がかからないために通知書が届かない場合など。

心当たりがあれば、照会しておきましょう。

 

有価証券・ネット証券など

ネットバンクや通帳のない銀行にお金を預けている場合や、ネット証券との取引がある場合などについてもエンディングノートにまとめておくと親切です。

 

骨董品

価値が分かりづらい遺産の筆頭格が、骨董品です。

税務調査で詳しく聞かれることがあるので、処分してしまわないようにしましょう。

 

他人名義の通帳

孫の名義などで残されていることが多い他人名義の通帳。

他人名義でも「贈与契約の書面がない」場合は贈与が無効となるため、被相続人の遺産となります。

 

生命保険や死亡退職金のみなし相続財産

死亡時に持っているわけではないため、みなし相続財産と呼ばれます。

みなし相続財産は、「500万円 × 法定相続人の数」の非課税限度枠が設けられています。

死亡退職金に関しては、死亡から3年以内に確定した死亡退職金に限ります。

 

負債は見逃さないように

負債を見逃すと、相続放棄しづらいなどの不利益を被ります。

相続放棄は、相続の事実を知ってから3か月以内に申請できる制度のこと。

負債があまりに大きかったときや相続したくない時にその権利義務を放棄できます。

相続放棄の期限後に債務が見つかった場合は債務を見つけられなかった相当の理由がないと相続放棄できないため、早めに負債を把握できるようエンディングノート等の準備が必要です。

 

土地の相続税評価額の求め方

遺産総額を把握するうえで、場合によっては預貯金以上に額が大きくなるのが土地です。

土地の相続税評価額は、毎年家に送られてくる固定資産税評価明細書に記載されている土地価額×1.14した数値がおおよその数字となります。

なぜ1.14倍(8/7倍)するのかというと、土地の固定資産税評価額が時価の70パーセント程度に設定されており、一方の土地相続税評価額が時価の80パーセント程度に設定されているからです。

大きな額になりやすい土地のおおよその相続税評価額を知っておけば、相続税の見通しも立ちやすいといえるでしょう。

故人の財産を確定するのに苦労する遺族は多いといいます。

終活中の方は、すべての遺産をしっかり把握して遺言書やエンディングノートにまとめておけば、遺族を困らせずに済むでしょう。

 

法定相続人・法定相続分とは?

相続税計算をご紹介する中ででてきた法定相続人ですが、相続人の権利や割合は、法律で定められており、次のように決められています。

以下に、一般的なケースをご紹介します。

 

被相続人(亡くなった方)に配偶者と子どもがいる場合

法定相続人

法定相続分

配偶者、子

配偶者が1/2

子が1/2(子が2人なら1/4ずつ)

 

被相続人に子がおり、配偶者はすでに亡くなっている場合

法定相続人

法定相続分

子がすべて相続する(子が3人なら1/3ずつ)

 

被相続人に配偶者がおり、子がおらず、親が存命の場合

法定相続人

法定相続分

配偶者、親

配偶者が2/3

親が1/3(両親がいたら1/6ずつ)

 

被相続人に配偶者・子がおらず、親がいる場合

法定相続人

法定相続分

親がすべて相続(両親がいたら1/2ずつ)

 

被相続人に配偶者がいる、子がいない、親がいない、兄弟姉妹がいる場合

法定相続人

法定相続分

配偶者、兄弟姉妹

配偶者が3/4

兄弟姉妹が1/4(兄弟姉妹が2人なら1/8ずつ)

 

まとめ

今回は、相続税の計算方法についてご紹介しました。

遺産総額さえ把握することができれば、計算はそんなに難しくありません。

しかし、土地の評価額やみなし相続財産も含めると、現実に漏れなく遺産総額を把握するのは困難です。

しっかり終活を行いたいという方は、一度税理士に相談してみることをお勧めします。

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