2019-10-10
終活ならではの離婚届!?死後離婚の書類の書き方や実例、介護問題
この記事の目次
みなさんは、「死後離婚」という言葉をご存知でしょうか。
終活をする中で知った方もいるかもしれませんが、死後離婚とは配偶者が亡くなってから離婚をすることです。
そんなことができるのかと、驚いている方もいるかもしれませんね。
死後離婚をすると、一緒の墓に入らなくて済んだり配偶者の親族と縁が切れたりとメリットがたくさんあります。
今回は、終活ならではの離婚届である死後離婚の届け出の書き方や実例をご紹介します。
死後離婚に関するよくある誤解についてもご解説しているので、ご興味のある方はぜひご一読ください。
死後離婚とは
死後離婚には、正式名称があります。
実は配偶者との離婚というよりも、その親族と関係を断つことのほうが目的です。
まずは、死後離婚の基本についてご紹介します。
夫婦の一方が亡くなってからの離婚
まず、死後離婚は夫婦の一方が亡くなってからでないとできません。
生存している方の配偶者が市役所に届け出を出すことで成立し、亡くなった方の配偶者の生前の意思などは原則として無関係です。
提出期限はないので、配偶者が亡くなった後ならいつでも出せるのが特徴。
手続きも簡単で、弁護士などを通す必要もありません。
あまり知られていない制度ですが、終活ブームが起こったこともあり近年では増えているようです。
正しい名称は「姻族関係の終了」
死後離婚の正式名称は、「姻族関係の終了」です。
つまり、本当は配偶者本人との離婚ではなく、配偶者の親族との関係を終了させることが目的。
死後離婚(姻族関係の終了)を行っても、苗字が変わることはなく戸籍の変更もありません。
苗字を変えたい場合は、別の手続きが必要なので気をつけましょう。
また、市役所に提出する届け出は離婚届ではなく「姻族関係終了届」になります。
死後離婚をするメリットと実例
死後離婚するメリットは、たくさんあります。
法律的な効力はほとんどありませんが、気持ち的には大きな役割を果たすもの。
ここでは、死後離婚をするメリットと実例をご紹介します。
義理の両親と縁を切れる
死後離婚をする一番のメリットは、義理の両親との縁を切れること。
姑問題や配偶者の親族の素行の悪さなどに悩まされてきた人にとっては、大きな負担の軽減になります。
原則として、この手続きを義理の両親や親族が拒むことはできません。
拒むことができるとすれば、遺産相続などで介護や身の回りの世話を約束していた場合です。
この場合は相手も弁護士を用意して裁判に持ち込まれる可能性があるので、気をつけましょう。
また、死後離婚をしてしまうと取り消すことは不可能になります。
自分や子供のことで頼りたいことがあっても難しくなるので、要注意です。
実例:夫の姑からの嫌がらせに悩んでいた妻。夫が亡くなった後も嫌がらせが続いたが、耐えられなくなり別居を検討。
姑に相談するも話を聞いてもらえないので、死後離婚を決意。現在は子供と一緒にのびのびと暮らしている。
一緒のお墓に入らずに済む
終活で離婚を考えるきっかけになる要因で最も多いのが、「一緒のお墓に入りたくない」というものです。
配偶者と仲が悪かったり、嫌な思いをさせられていたりしたことが原因になっています。
また、配偶者との関係は良好でも、親族と馬が合わないということもありますよね。
夫と一緒のお墓に入るのは構わないけど、姑と一緒には絶対に入りたくないという妻側の訴えは増えているのです。
死後離婚を行えば、この悩みは解消されます。
自分の理想とする老後、死後を叶えるためにも死後離婚は有効です。
実例
①夫からのモラハラに長年耐えてきた妻。死後まで一緒のお墓に入って過ごしたくないため、死後離婚の手続きをした。
②夫との関係は良く、問題はなし。しかし、夫の親族とはあまり仲が良くなく、ほとんど会っていなかった。死後は自分の家系のお墓に入りたかったため、死後離婚の手続きを実行。
気持ちの問題がかなり大きい
死後離婚には、法的効力はほとんどありません。
特別な手続をしない限り苗字が変わることはなく、配偶者の遺産相続なども受け取ることが可能。
そのため、死後離婚を行うメリットには気持ちの問題がかなり大きいといえます。
夫や妻としてではなく自分の人生を歩みたい、親族との面倒な関係性を放棄してすっきりしたいという方におすすめです。
実例:配偶者の親族とは仲が良く、死後も関係性は良好。しかし、親族との付き合いが段々と億劫に感じるように。
悩んだ結果、自分の第二の人生を歩もうと死後離婚のことを親族に相談。快諾してもらえたため、死後離婚の手続きを実行。
法的に姻族関係はなくなったが、今でも数年に一度の良好な交流関係は続いている。
終活ならではの離婚届「姻族関係終了届」の書き方
死後離婚をするには、「姻族関係終了届」を提出する必要があります。
難しい手続きは一切無く、記入から提出までは数分で済むことも。
それでは、終活ならではの離婚届「姻族関係終了届」の書き方をご解説します。
本籍地や死亡した配偶者の氏名を書く
姻族関係終了届を提出するには、専用の届け出が必要です。
各自治体の市役所で貰うか、HPからダウンロードして印刷しましょう。
姻族関係終了届に記入する主な内容はこちら。
- 自分の本籍と氏名、現在の住所
- 亡くなった配偶者の本籍と氏名
- 届け出人の署名と押印
項目は少なく、3分もあれば記入は完了できます。
とにかく簡単なのが特徴です。
市役所の窓口に持って行くか郵送する
姻族関係終了届の記入が終わったら、市役所の窓口に持っていくか郵送で提出します。
手続きを急ぐことはあまりないと思いますが、 窓口なら不備があった場合にその場で分かるので安心です。
姻族関係終了届を提出する時に必要な書類一覧はこちら。
- 姻族関係終了届 1通
- 戸籍謄本(全部事項証明) 1通
- 印鑑(押印していない場合)
- 本人確認書類(免許証やパスポートなど) 1通
お住まいの地域や市役所によって必要な書類は異なりますが、主にこれらが必要になります。
本籍地以外の場所に届けている場合は、姻族関係終了届や戸籍謄本が2通ずつ必要なことも。
あらかじめ、2枚ずつ用意しておくと便利です。
また、市役所の窓口で提出する時には不備がない限り、事情や理由を聞かれることは絶対にないので安心してくださいね。
死後離婚に関する5つの誤解
死後離婚はあまり知られていない制度なので、誤解を抱いている人も多いようです。
手続きは簡単ですが、人を巻き込むことにもなるので正しい認識を持っておくことが大切。
最後に、死後離婚に関する5つの誤解についてご解説します。
1.死後離婚をしても苗字は一緒
死後離婚は、正式には本人との離婚ではないため、手続きを行っても苗字は変わりません。
配偶者の死後、名字を元に戻したい場合は「復氏届」が別に必要になります。
こちらも市役所で提出することができるので、一緒に検討される方は多いようです。
また、復氏届は本人にのみ有効なので子供への影響はありません。
子供の名前も一緒に変更したい場合は、裁判所への申し立てが必要になるので要注意です。
2.死後離婚をしても相続は受け取れる
死後離婚は配偶者の親族との関係を断つことなので、遺産相続などの権利はなくなりません。
配偶者の年金なども、引き続き受け取ることができます。
また、子供が配偶者を代襲して、親族の相続を受け取ることも可能。
子供は死後離婚には何の関係もなく、影響を受けないからです。
この点を配偶者の親族が誤解していることもあるので、事前に話し合いをする場合はしっかりと伝えておくことが大切です。
3.死後離婚をしても借金は解消しない
配偶者に借金があった場合、死後離婚をしても返済義務はなくなりません。
これは復氏届を出して、苗字が変わっても一緒です。
どうしても借金を解消したい、負担を背負いたくない場合は「相続放棄の手続き」をする必要があります。
少し大変な手続きですが、老後のお金にも関わる大切なことです。
借金が解消しないというのは通常の離婚と違うところなので、よく覚えておいてくださいね。
4.死後離婚をしなくても再婚していい
配偶者の死後に再婚をする場合、死後離婚の手続きをしなくてはいけないと思われている方がいますが、それは誤解です。
死後離婚の手続きをしなくても、再婚はできます。
再婚の際に死後離婚をするメリットは、元の配偶者の親族との縁を断ち切れることです。
必ずしも必要なわけではありませんが、新たな家庭を築くうえで必要であれば行なっておきましょう。
5.死後離婚をしなくても義理の両親の介護義務はない
死後離婚をする理由に、義理の両親の介護問題を挙げる人はとても多いもの。
しかし、実は死後離婚をしなくても義理の両親の介護義務はそもそもありません。
法的な義務はないので、拒むことが認められているのです。
ただし、遺産相続の条件等で「介護をすること」がある場合は例外。
その場合に介護を放棄すると遺産相続を受け取れなかったり、裁判に及んでも負けてしまったりすることになります。
死後離婚をしなくても介護義務はありませんが、気持ち的に拒むのが心苦しいという方は死後離婚の手続きをするのがおすすめです。
終活ならではの離婚届「姻族関係終了届」について【まとめ】
死後離婚の「姻族関係終了届」は、終活ならではの離婚届ともいえます。
法的な効力はほとんどありませんが、人によっては悩みや苦しみから解放されることも。
手続きは簡単ですが、受理されてしまうともう元に戻すことはできないので、慎重にご検討してみてくださいね。