2019-10-10
相続税の計算方法は意外とかんたん?非課税の対象となるケースもご紹介
この記事の目次
相続税の計算って難しそうだし、間違えてしまいそうで怖い…。
遺産を相続する機会はなかなか無いので、自分で計算するとなると不安になってしまいますよね。でも、実は相続税の計算方法は意外とシンプルでかんたんです。
落ち着いて順番に計算していけば、誰でも正しい相続税の金額を把握できます。
今回は、相続税の計算で戸惑っているあなたのために計算方法を徹底解説してみました。
基礎控除や非課税の対象になるケースについてもご紹介しているので、正しく納税できるように一緒に確認していきましょう♪
相続税とは
相続税とは、遺産を受け取る時に課される税金のこと。
ただし、全ての人に課される訳ではありません。
まずは、相続税の基本についてご紹介します。
遺産を受け取るのにかかる税金
相続税は、富の再分配を目的に徴収されています。
遺産が大きいということは、それだけ眠っていた財産が多かったということ。
その財産の一部を税金という形で徴収することで、国民や社会に還元しようというのが狙いです。
ただし、対象となるのは多額の遺産に対してで、一定額を下回る場合には相続税は課されません。
一定額とは、遺産の合計から基礎控除や特例の控除を差し引いたもの。
基礎控除については後ほど詳しくご解説しますが、遺産の合計や相続人の数によって金額は変動します。
ちなみに、相続税を実際に課されている人の割合は2017年の時点で8.3%、約12人に1人です。
多くの人にとっては関係ないかもしれませんが、対象者なのにうっかり申告や納税をし忘れてしまった…なんてことのないように、相続税に関する知識を持っておくことが大切です。
相続税には基礎控除がある【非課税】
基礎控除とは、納税が免除される一定の金額のことです。
納税の負担を軽減することが目的で、遺産の合計が基礎控除額の範囲内までであれば相続税を支払う必要はありません。
反対にいうと、相続税がかかるのは「遺産の合計が基礎控除額を上回った場合」です。
遺産の合計全てに税金が課される訳ではなく、上回った部分のみが相続税の対象になります。
例
遺産の合計が5,000万円で基礎控除額が4,200万円だった場合
相続税が課されるのは、
5,000万円ー4,200万円=800万円
で、800万円に対してです。
厳密にいうと、基礎控除以外にも特例の控除がある場合もあります。
その場合は、
遺産の合計ー(基礎控除額+特例の控除額)=課税の対象になる金額
という計算式になります。
課税の対象になる金額がマイナスになる場合、相続税を納める義務は生じません。
相続税の計算方法
相続税の計算は、遺産の合計と相続人の数で計算できます。
一見、複雑で難しいようですが意外とシンプルです。
それでは、相続税の計算方法についてご解説します。
遺産の合計を計算する
まずは、故人の残した遺産合計の計算です。
遺産は大きく分けると、課税財産と非課税財産の2種類に分けられます。
課税財産の例
- 現金(預貯金)
- 不動産(土地)
- 生命保険金
- 退職手当金
- 株式
非課税財産の例
- 墓地や仏具全般
- 公共事業用の財産(不動産)
- 心身障害者共済制度の給付金
相続税の計算をする時は、課税財産のみを合計します。
ただし、注意が必要なのは課税財産の中に入っている「生命保険金」と「退職手当金」です。
この2つは民法上では相続財産の対象外ですが、相続税を計算する時には課税の対象になる特殊な財産です。
これらは「みなし財産」といって、個別に非課税枠が設けられています。
それぞれの非課税枠は
500万円×法定相続人の数
で計算できます。
※法定相続人…民法で定められている、法的に遺産を受け取る権利のある人のこと。配偶者や子どもなどが対象になる。
少し複雑なので、例をご紹介します。
例
法定相続人
3人(配偶者、長男、長女)
故人の残した課税遺産
現金(預貯金)…3,000万円
不動産(土地)…1,000万円
生命保険金…2,000万円
退職手当金…500万円
株式…1,200万円
この場合、生命保険金と退職手当金の非課税枠は500万円×3なので、それぞれ1,500万円です。
つまり、
生命保険金 2,000万円ー1,500万円=500万円 →500万円が課税対象となる
退職手当金 500万円ー1,500万円=ー1,000万円 →課税対象なし。遺産の合計にカウントしない
ということになります。
この非課税枠を考慮して遺産の合計を計算すると、
3,000万円(現金)+1,000万円(不動産)+500万円(生命保険金)+1,200万円(株式)=5,700万円
になります。
基礎控除額を算出する
基礎控除額の計算式はこちらです。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=相続税の基礎控除額
つまり、法定相続人が3人、遺産の合計額が5,700万円だった場合の基礎控除額は、
3,000万円+(600万円×3)=4,800万円
になります。
この場合に相続税の課税対象となる金額は、
5,700万円(遺産の合計)ー4,800万円(基礎控除額)=900万円
です。
このように、基礎控除額は遺産の合計と相続人の数によって算出されます。
法定相続人それぞれの取り分を計算する
遺産の合計から基礎控除額を差し引いて課税対象となる遺産の金額が分かったら、法定相続人それぞれの取り分を計算します。
法定相続人は、範囲と順位が明確に定められているのが特徴。
- 第一順位…子ども
- 第二順位…親
- 第三順位…兄弟姉妹
※配偶者はいかなる場合であっても相続を受ける権利があるので、前提としてこの中には含まれていません。
それぞれ対象の人物が死去している場合は、その直系の子ども(故人の孫)や親(故人の祖父母)が「代襲相続人」として代わりに相続の権利を獲得できます。
その場合も順位は同じなので気をつけましょう。
遺産の取り分は、どの立場の法定相続人が何人いるのかによって決まります。
例1 配偶者のみ…遺産の全て
例2 配偶者と子ども1人
配偶者…遺産の1/2
子ども…遺産の1/2
例3 配偶者と子ども2人
配偶者…遺産の1/2
子ども①…遺産の1/4
子ども②…遺産の1/4
※子どもは残った遺産を均等分割するため。子どもが3人いる場合の1人あたりの取り分は、残りの遺産の1/3ずつになる。
例4 配偶者はおらず、子ども2人のみ
子ども①…遺産の1/2
子ども②…遺産の1/2
例5 配偶者と親
配偶者…遺産の2/3
親…残りを均等に分割
例6 配偶者と兄弟姉妹
配偶者…3/4
兄弟姉妹…残りを均等に分割
このように、配偶者の取り分が一番多くなるように設定されています。
子どもや親、兄弟姉妹は性別や年齢に関係なく均等分割するのが基本です。
法定相続人それぞれの相続税を計算する
相続税は、法定相続人それぞれが納税しなくてはいけません。
税率は相続した課税財産の金額によって異なります。
相続税の課税価格と税率、控除額はこちら。
1,000万円以下…10%、控除なし
3,000万円以下…15%、控除額50万円
5,000万円以下…20%、控除額200万円
1億円以下…30%、控除額700万円
2億円以下…40%、控除額1,700万円
3億円以下…45%、控除額2,700万円
6億円以下…50%、控除額4,200万円
6億円超え…55%、控除額7,200万円
自分の相続する課税財産の金額に応じて、相続税の金額が決定するのが特徴です。
最後に、相続税の計算の流れを例でまとめてみます。
例
遺産の合計…2億円
法定相続人…3人(配偶者と子ども2人)
基礎控除額の計算
3,000万円+(600×3)=4,800万円
基礎控除額を除いた課税財産の計算
2億円ー4,800万円=1億5,200万円
1億5,200万円を法定相続人3人(配偶者と子ども2人)で分配した場合の取り分
配偶者…取り分は1/2なので7,600万円
子ども①…取り分は1/4なので3,800万円
子ども②…取り分は1/4なので3,800万円
法定相続人それぞれが支払う相続税
配偶者…7,600万円×0.3ー700万円=1,580万円(配偶者控除により0円)
子ども①…3,800万円×0.2ー200万円=560万円
子ども②…3,800万円×0.2ー200万円=560万円
※配偶者は「配偶者控除」といって、相続した金額が1億6千万円以下なら相続税を支払う必要はありません。
このような計算になります。
ただし、これは法定相続の規定通りにきっちり分けた場合の税額です。
実際には話し合いや遺言状の内容によって、相続する金額の割合が変動することもあります。
その場合は全員の相続税を全て足して、実際の割合や金額に基づいて計算をし直す必要があるので気をつけましょう。
相続税が非課税の対象となるケース3つ
相続税には基礎控除だけでなく、非課税の対象となるものがいくつか存在します。
節税のためにも、適応できる控除や特例はしっかりと利用していきましょう。
ここでは、相続税が非課税の対象となるケース3つをご紹介します。
1.生命保険金や退職手当金の一部
「相続税の計算方法」で詳しくご紹介しましたが、生命保険金や退職手当金には非課税枠が設けられています。
これは、この2つが「みなし財産」として遺産の中に計上されているからです。
生命保険金と退職手当金の非課税枠の計算方法
500万円×法定相続人の数
この非課税枠を考慮せずに遺産の合計にカウントしてしまうと、正しい相続税の計算ができなくなってしまう恐れがあるので、気をつけましょう。
2.墓地や仏具などの非課税財産
遺産の中には現金や不動産だけではなく、たくさんの財産が含まれています。
墓地や仏具も遺産として譲り受けることがあるかと思いますが、これらの財産は相続税の課税対象にはなりません。
※他にも、公共事業用の財産(不動産)や心身障害者共済制度の給付金なども非対象です。
遺産の中には、課税財産と非課税財産があるということを覚えておいてくださいね。
3.相続人が未成年である場合の控除
相続人が未成年である場合、「未成年控除」というものが適用されます。
未成年控除とは、成人するまでの間は毎年10万円が控除されるという規定のこと。
子どもや若い人の税負担軽減が目的です。
その他、相続税には配偶者控除や障害者控除などさまざまな種類の特例が存在しています。
節税のためにも、自分が該当して受けられる控除がないか確認をしておくことが大切です。
相続税の計算方法と非課税の対象になるケース【まとめ】
相続税の計算は、基礎控除額を割り出すことで導き出せます。
気をつけたいのは、相続税の納税は法定相続人それぞれが行わなくてはいけないということ。
それぞれ適用される特例や控除などが違う場合もあるので、計算が難航しそうな場合は税理士の方に相談をしながら手続きを進めてみてくださいね。