2019-11-11
介護老人'保健'施設とは?老健と特養の違いや費用、看護師の役割を解説
この記事の目次
現在、日本における高齢化は世界に類がないと言われるほどの速度で進行しています。
そのような状況を踏まえ、高齢化のニーズに合わせた高齢者向けの施設が充実しているようです。
ところが、施設は充実しているものの、あまりにも多様化しているため自分が利用できる施設がよく分からない、また、ご家族の方もどのように施設を選んだらよいのか分からないといったことがあります。
そこでこの記事では、医療のケアやリハビリを必要とする高齢者のための「介護老人保健施設」(通称、老健)について解説していきたいと思います。
「介護老人保健施設」の形態、料金、入居条件などはどのようになっているのでしょうか。
ぜひ、ご覧ください。
「介護老人保健施設」は公的施設
老人ホームの種類は大きく分けると、社会福祉法人や地方自治体が運営する施設と民間で運営する施設になります。
この2つを一般的には、公的施設と民間施設と分類するようです。
今回、紹介する施設は医療的ケアを目的とする施設のため、医療法人や社会福祉法人が運営しているので公的施設ということになります。
「介護老人保健施設」の形態
老人ホームにも様々な形態の施設があります。
例えば、特別養護老人ホームは要介護3以上の高齢者が終身、介護保険を受けながら生活できる施設になっています。(例外有)
介護老人保健施設の場合は要介護度は1~5の方が対象にはなっていますが、主に病気や怪我などで自宅ではケアが難しい高齢者が回復・復帰するまでの介護を含めたケアを受けることができる老人ホームとなります。
入居している期間も3ヶ月~6ヶ月程度が一般的なようです。
「介護老人保健施設」に入居できるのは?
例えば、脳梗塞で倒れてしまい病院に入院して治療、回復、退院となります。
病院での治療が終わったとしても、後遺症で身体に麻痺(まひ)が残っている場合は自宅に帰ってすぐには日常生活ができません。
または、加齢による身体能力低下で転倒して足を骨折してしまったとうケースでも病院から自宅に直接帰っても、自宅にはバリアフリー機能が準備されていないでしょう。
介護老人保健施設では、このような高齢者のために自宅に帰るまでの医療ケアやリハビリの必要な人が入居できます。
どんな医療ケアやリハビリをしてくれるの?
老健でのリハビリは基本、生活全般がリハビリとなるようです。
これは、介護が必要な高齢者が自宅に帰ってからでも困ることがないようにするための自立を支援することが目的になっています。また、残存機能の回復も目指せます。
そのためには、医師による指導のもとで、看護師、介護士・介護福祉士、管理栄養士、リハビリ療法士などの専門職の連帯で提供されている介護サービスになります。
リハビリはリハビリ専門職の訓練時間だけではなく、日々の生活の中でも心身機能の維持・向上を図ります。利用者さんの能力を最大に引き出すために他職種の連帯で支援をしてくれるようです。
リハビリの種類
・短期集中リハビリ
病院から退院後、または自宅から入居3ヶ月の方には、集中的に個別リハビリが実施されます。
・機能訓練リハビリ
歩行訓練やトイレ動作などの日常動作を個別に練習します。また、立ち上がり動作の練習では筋力や耐久性の向上を目的にします。これらは、廃用性変化の改善を目指し集団で機能回復訓練をします。
・認知症短期集中リハビリ
認知症の症状が見られた方には、進行予防目的で個別に脳を活性化させるリハビリを行います。運動療法や作業療法、音楽療法、回想療法、現実見当識訓練などの従来通りの手法からiPad等を活用した学習訓練も取り入れています。
・集団体操
基礎体力向上を目的とした集団で体操を実施します。
・机上活動
脳の活性化や活動性を引き出すためにパズルや大人のぬりえ、簡単な計算問題、間違い探しなどを机上で行えるアクティビティを提供します。
・自主訓練
集団や個別のリハビリとは別に、本人の能力や機能に応じて安全性を十分に確認した上で利用者さんが1人で訓練ができるリハビリ(起立訓練・平行棒内歩行など)を提供します。
・試験外泊
自宅での復帰に向けた準備を整えながら、ご家族や在宅介護サービス提供者の協力のもと、入居期間中に試験外泊を実施することができます。
これからの自宅への復帰に向けて欠くことができない検証の場面でもあり、リハビリの最終ゴールとも言える確認作業でもあります。
「介護老人保健施設」に必要な費用は?
特別養護老人ホームにかかる費用は、入所する時に必要な一時金などはかからずひと月にかかる費用だけでした。
こちらの、介護老人施設の場合も、同じように公的施設だということから入居する時の費用などはかかりません。
「特別養護老人ホーム」については下の記事に詳しく書いてあるので参考にしてくださいね。
【関連記事リンク】特別養護老人ホームとは何か?費用減免や入所条件について解説します
ひと月にかかる費用も同じで、施設サービス費、食費、居住費、その他の日常生活費などの全ての合計を支払うことになります。
食費と居住費は施設と利用者さんの契約内容によって違いますが、施設サービス費は地域が同じなら一律となっています。
また、介護度の状態と部屋ごとのタイプによって支払う金額が違ってきます。
この部屋に支払う金額は特別養護老人ホームとは少し違ってくるようです。
費用の違いはなぜ?
同じ公的施設のはずなのになぜ、施設サービス費が違うのでしょう?
これは、入居目的が違うためです。
特養老人ホームの目的は介護を含めた生活する施設でしたが、こちらの老健の目的は病気や怪我からの復帰を目指すことです。
そのため、施設がリハビリしやすい設備や体制の環境に整えられているのです。
このようなことから、施設サービス費の金額が加算されていると考えられます。
医療保険はどうなる?
老健では日常的にかかる医療の血液検査、尿検査、怪我の傷の消毒などの処置等、注射や投薬といった費用は施設サービス費に含まれているので、老健に入居中の医療費はかからないというのが基本です。
また、老健ではある程度の医療行為を受けることが可能となるため、医療費を心配する必要がないと言えそうです。
さらには、老健で受ける施設サービス費は税金還付の対象となる医療費控除扱いとなります。
特養老人ホームの場合には、医療費の扱いは医療保険を利用して施設に支払う利用料とは別に負担があります。
老健にはどれぐらい入居していられるの?
介護老人保健施設、老健に入居する目的は病気や怪我などの復帰です。
特養老人ホームの場合は基本、高齢者が終身までを利用することが可能でした。
老健では、利用者さんのケアプランに合わせて介護を行いながら3ヶ月ごとに自宅に帰っても日常生活に困らないかどうかの状態を検討します。
老健での入居期間に介護上の期限は設けられていないので、契約期間が過ぎたからと言って絶対に退去しなければならないということはありませんが、終身で利用できる特養に比べると入居期間はグッと短くなるようです。
また、老健では自宅への復帰率とベッド回転率によっても種類が分れています。
「在宅強化型老健」とは
介護老人保健施設には「在宅強化型老健」という種類の施設もあります。
老健での入居期間は、平成29年度のデータによると平均の在所日数が369.7日とありますが、在宅強化型老健では、同じ年のデータでは平均の在所日数が204.9日とかなり短くなっています。
まだ、仕事などが現役の方で早めの復帰を目指すなら、リハビリ専門職の多い在宅強化型老健で集中的なリハビリを受け仕事への復帰も叶うのではないでしょうか。
在宅強化型老健に入居すると早めの自宅復帰が目指せるようですが、介護サービス費が高くなってしまうデメリットがあります。
このような在宅復帰強化型の老健は近年登場し増加傾向にありますが、老健での在宅を強化する傾向が高くなると言うことは今後さらに長期入居が難しくなってくると思われます。
長期の入居を希望されている高齢者、またはご家族の方は長期入居が可能な特養老人ホームを検討することになるようですが、特養老人ホームは入居待ちの方がたくさんいるためすぐに入居はできないようです。
老健での看護師さんの役割とは?
看護師さんは病院やクリニックで患者さんのケアをしてくれます。
老健での看護師さんの大きな役割は利用者さんの健康管理に携わる全般です。
では具体的に老健で看護師さんがどんな役割を担っているのかを見ていきましょう。
看護師さんの勤務体制
老健では、24時間駐在が義務付けられているため日勤と夜勤の業務があります。また、施設によりますが2交代制、3交代制のシフトになる場合もあるようです。
年末年始にも利用者さんは施設で生活しているので看護師さんも当然、勤務にあたります。
看護師さんの主な仕事
・医療処置
褥瘡処置(じょくそうしょち)、軟膏処置(なんこうしょち)、バルンカテーテル、インスリン、ストーマ、浣腸、を処方されている薬などで患部の処置。
また、時には点滴や導尿、胃ろうの管理など、施設の設備に応じて行う。
・朝・昼・夕・就寝前などの服薬を分ける作業や爪切り、歯のケアなど
・利用者さん(患者)へのアセスメント
老健では、各職種が連帯で利用者さんの介護、リハビリに当たるため利用者さんの健康状態の変化によって介護士から報告を受け、医療機関との連絡調整をする場合もあります。
また、高齢者の入居施設である老健での看護師の役割は、利用者さんに急変が起こる場合も多くあり、そのような時に状況を見立て判断しなくてはならないこともあるため大変重要な役割を担っていると言えます。
まとめ
ここまで、介護老人保健施設について見てきましたが、老健は在宅復帰を目指す方の施設となるため、介護度のあまり高くない方の入居が中心となります。
特別養護老人ホームとの違いは、老健は身体機能の復帰が目的とされているため医療ケアやリハビリが充実していました。
一方、特養は介護度が比較的高い方を受け入れる施設のため介護のサービスが充実しています。
介護老人保健施設に入居を希望する場合は、在宅復帰を目指す方にはおすすめですが病状があまり安定しないという人には特別養護老人ホームの方が向いているようです。
高齢者の介護施設を選ぶ際に、介護老人保健施設が相応しいのか、特別養護老人ホームが相応しいのかよく検討してみてはいかがでしょうか。