2020-01-01
介護施設の高齢者が感染症を予防するには?ポイント6つを紹介!
この記事の目次
毎年、11月に入り冬の訪れを感じる頃になると流行する疾患にインフルエンザがあります。
インフルエンザは風邪と症状が似ているため気づくのが遅れて悪化してしまう人も少なくはないようです。
特に、気をつけていただきたいのが高齢の方です。
高齢者は抵抗力や免疫力が弱くなっているため肺炎を伴うこともあり重症化してしまうおそれがあります。
また、要介護の高齢者を介護する施設でインフルエンザの感染が流行してしまうと集団感染となり大変なことになってしまいます。
そこで、この記事では高齢の方がインフルエンザにかからないための予防ポイントと介護施設での対策を解説してみました。
ぜひ、ご覧になり参考にしてくださいね。
風邪とインフルエンザの違い
インフルエンザの初期症状は風邪の症状とよく似ているため、気づかないうちに悪化してしまうことがあります。
風邪とインフルエンザはどのような違いがあるのでしょう。
風邪の症状
風邪とは、感冒とも言われ一般的には様々なウイルスによって引き起こす病気です。
その症状は鼻汁、咳、喉の痛み、くしゃみなどが中心で強い全身的な症状はあまりみられません。
発熱しても高熱にはならず、重症化することは滅多にないことが特徴です。
インフルエンザの症状
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染し引き起こす病気です。
症状には風邪の症状のような鼻汁、咳、喉の痛みなどもありますが、38℃以上の高熱や、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身の怠さ(だるさ)などが比較的早く同時に現れることが特徴です。
しかし、高齢者は高熱を出したりインフルエンザ独特の症状がみられないことがあります。
ただ怠く元気がないといった症状のみの人も少なくはないようです。
そのようなことから重症化してしまったり、施設などでは集団発生となり大きな健康被害となってしまいます。
インフルエンザ感染経路
インフルエンザは、人から人へとうつる感染症です。
日本では毎年およそ10人に1人、つまり約1,000万人の人がインフルエンザに感染しているようです。
飛沫感染
インフルエンザにかかっている人が電車などでくしゃみや咳をすると飛沫(小さな水滴)が放出されます。その飛沫がウイルスで、別の人が口や鼻から吸い込んでしまい感染してしまいます。
接触感染
インフルエンザウイルスである飛沫が付いた物、例えば手すりやドアノブ、テーブルやスイッチなどを別の人が触り、その手をそのまま目や口、鼻に触れてしまうことで感染してしまいます。
高齢者はハイリスク
高齢になると、免疫力の低下から若い人より感染症にかかるリスクが高くなってしまいます。
免疫とは、病気を発見しやっつけてくれる役割をしてくれる身体にはなくてはならない機能です。
その免疫機能は60歳を超える頃から20代の頃から比べるとおよそ半分以下になると言われています。
高齢になると、加齢から免疫力を主導する白血球が生み出される数が減ってしまい、その活動も衰えてしまうようです。
さらに、白血球の成長を助けるリンパ節や脾臓の機能も低下するため白血球の病原体への反応も弱くなってしまいます。
このようなことから、高齢になるとインフルエンザのような感染症にかかりやすくなるリスクが高くなってしまうのです。
持病がある高齢者
高齢になると免疫力の低下からインフルエンザのような感染症にかかるリスクが高くなるだけではなく、肺炎を併発してしまう確率も高くなってしまいます。
さらには、呼吸器、心臓、腎臓などに持病がある方は命に関わるほどに重症化してしまうことも珍しくないようです。
肺炎を併発しないまでも、全身に起こる症状で食欲不振になり栄養状態が悪くなってしまうことや、寝たきりになってしまうこともあります。
インフルエンザ予防のポイント
高齢の方は様々なリスクからインフルエンザにかかりやすくなってしまうようです。
それでは、そのリスクを減らすためのポイントがあるのではないでしょうか。
ここでは、そのポイントを解説してみたいと思います。
ポイント1.ワクチンを摂取する
ワクチン接種しておくことで、インフルエンザを発症する可能性が減ります。
完全に発症を防ぐことはできませんが、仮に感染しても重症化を防ぐ効果はあります。
高齢者の場合のインフルエンザの予防接種は1年に1回で、ワクチンの効果が出るまでには2週間ほどかかることが予想されているため毎年12月までにはワクチン接種を済ませることが望ましいようです。
また、65歳以上の方には自治体でインフルエンザ予防接種の費用を一部助成してくれます。自治体によって費用や実施期間が異なるため、詳細は住所のある市区町村にお尋ねください。
ポイント2.免疫力を高める
高齢になると免疫力の機能が低下してしまい病気にかかるリスクが高くなってしまうようです。インフルエンザもその1つで、インフルエンザにかからないようにするためには免疫力を高める必要があります。
免疫力を高める方法はもちろん日頃の生活習慣にあります。
その中でも特に気をつけることは食事や睡眠、運動です。
バランスの良い食事
・炭水化物を摂り過ぎない
・抗酸化作用のあるものを食べる
・キノコ類
・緑黄色野菜
・大豆類
これらを中心に腹八分目でバランス良く食事する。
睡眠・運動
高齢になると夜中のトイレや、足腰の痛みなどから不眠になることがあるようです。
そのため日中に昼寝をしてしまい、ますます夜になると眠れなくなるといった悪循環に。
お天気の良い日には外に出て体操や歩く運動をすると適度に疲れ、自然な眠りにつながるようです。また、昼寝をする時間は3時までに20~30分程度にしましょう。
それ以上寝てしまうと夜の睡眠に影響が出てしまいます。
日中、太陽の陽を浴びることで幸せホルモンのセロトニン効果が得られ、また、ビタミンⅮを吸収するため骨粗しょう症の予防もできます。
ポイント3.手洗い
インフルエンザの予防に手洗いは必要不可欠。
手洗いでもただ、流水で洗う手洗いだけではウイルスは洗い落とせません。
流水と石けんで手のひら、甲、指と指の間、爪の間、手首まで洗います。洗い終わったら水で洗い流し、使い捨ての紙タオルで拭き取りましょう。
どうしても手洗いができない状況では、アルコール消毒でも効果があります。
ポイント4.マスクを正しく着用する
インフルエンザが流行る時期になるとマスクを着用している人をよく見かけます。
インフルエンザは飛沫感染で人から人へとうつるためでしょう。
よその人からうつるのを防ぐためでもありますが、自分のくしゃみや咳の飛沫が人に飛ばないようにすることも必要です。
ですが、いくらマスクを着用していても正しくしていなければ意味がありません。
マスクは、鼻と口の両方を確実に覆う(おおう)ようにしましょう。
ポイント5.口腔ケア
インフルエンザと口腔ケア?
何の関係もないように思えますが実はお口の中を清潔に保つことはインフルエンザなどの感染症予防には必須です。
口腔ケアをおこたり口の中に細菌が増えてしまうと、細菌が出す酵素でインフルエンザなどのウイルスが口の中の粘液に付着してしまい、そのまま体内に入り込んでしまうことから様々な疾患を引き起こしてしまうのです。
高齢になると、口腔機能も低下してしまうことから高齢者の口の中は汚れが溜まりやすく、細菌も増殖してしまいます。
それを防ぐためには、日頃から丁寧な口の中のケアが必要です。
口腔ケアのポイント
歯磨きができる人にはできるだけ自分でしてもらい、歯磨きが終わったらチェックします。
・歯磨きの仕方
・歯ブラシは鉛筆を持つように持つ
・力は入れず、歯茎に当たっても痛くない程度の力
・入れ歯を使用している場合は外し、残存の歯を磨く
・歯ブラシを細かく動かしながら1本1本丁寧(ていねい)に
・奥歯の溝、歯と歯肉の間、抜けた歯の周りなどに磨き残しがないようにチェックする
・歯磨きが終わったらブクブクうがいをする
口腔清拭(こうくうせいしき)をする場合
寝たきりの高齢者や水を口に含めない高齢者には口腔清拭をしましょう。
・指(スポンジでも可)にガーゼやウエットティッシュを巻いて口腔内の汚れを拭き取ります。
・頬と上の歯の間を奥の方から手前に向かって拭き取る
・上顎も同じように奥から手前に拭き取る
・下も上と同様に拭き取る
入れ歯のケア
・入れ歯を外す場合は下の入れ歯から外す、前歯を持ち奥歯を浮かせ空気を入れるイメージで上にあげる
・上の入れ歯を外す場合も下の入れ歯を外すときと同じイメージで下におろす
・入れ歯専用ブラシでしっかりとぬめりが取れるまで洗浄する
・歯磨き粉を使うと、研磨剤が使用されているため入れ歯が傷つき細菌が繁殖することもあるため入れ歯専用のものを使う
ポイント6.適切な温度と湿度
空気が乾燥すると咳やくしゃみなどで出た飛沫は遠くまで飛んでしまい、それによってインフルエンザウイルスも拡散してしまいます。
また、高齢になると様々な理由から体内の水分量も減ってきてしまいます。
室内の温度や湿度を適切に保つことで乾燥を防ぎましょう。
冬の温度は20~22℃、湿度は45~55%を目安にします。
また、こまめな水分補給も必要です。
施設での対策
介護施設などでのインフルエンザ対策はどのようなものなのでしょう。
・施設外からインフルエンザウイルスを持ち込まない
・施設訪問者には、手洗い、手指の消毒を徹底してもらう
・マスクをする(してもらう)
・感染した人、感染の可能性がある人には訪問を遠慮してもらう
・施設内の目に付きやすい場所に「インフルエンザ予防」等のポスターを貼り、意識してもらう
・地域のインフルエンザ情報を知る
・介護職員もワクチンを早めに接種する
・手すりやテーブル、ドアノブやスイッチなど複数の人が触ることが多い箇所はマメに拭き取り消毒、定期的に床掃除などもして使ったモップや雑巾は洗ったら乾燥させておく
・手洗い場では、水道栓の汚染から感染を防ぐために肘押し式、足踏み式、自動式等を設置、手拭きも使い捨ての紙タオルを設置
・高齢者の健康状態を日頃から観察
・観察している事で高齢者の体調の悪さを早く気付くことができる
・職員同士で高齢者の健康状態を情報交換しておく
・職員が高齢者の健康状態に異常を感じたらすぐに看護スタッフや医師に連絡
・高齢者に医療機関での受診が必要だと判断したら医療機関に連絡、必要な指示を仰ぐ
・インフルエンザにかかった高齢者がいたら可能な限り個室に移動させるか他の利用者に移動してもらう
・感染者が複数いる場合には感染拡大を防ぐために感染者を同じ部屋に移動させる
・感染者の食事や排泄介助、たんの吸引などをする場合には飛沫感染を防ぐためにも日頃から使い捨てマスクや手袋、エプロンなどを十分常備しておく
まとめ
インフルエンザなどの感染症は「持ち込まない」「持ち出さない」「広げない」を徹底する必要があります。
高齢者はインフルエンザにかかると重症化してしまうおそれもあるため、かからないように上記のポイントを心がけましょう。
高齢になると、自分では症状に気づかないため、知らず知らずのうちにインフルエンザが広まってしまうことがあります。
そうならないためにも、日頃から高齢者の健康状態を観察しておくことが重要です。
また、介護職員も日頃の生活習慣を見直しインフルエンザに負けない体づくりをを目指しましょう!