2020-01-01

不倫で公正証書を作成、取り消しは可能?【無効・変更主張を解説】

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不倫で公正証書を作成、取り消しは可能?【無効・変更主張を解説】

この記事の目次

離婚には協議離婚、調停離婚、裁判離婚という方法があります。

日本では協議離婚という方法で離婚する人が多くを占めているようです。

しかし、協議離婚で離婚してしまうと、元夫婦が話し合いだけで離婚が成立するので後々にトラブルになる可能性が少なくありません。

そんなトラブルを防ぐためにはいくら仲良く話し合いで離婚できたとしても離婚で発生する取り決めを公正証書にして作成しておいた方が安心です。

公正証書とは、どんな効力があるのでしょう。

この記事では、公正証書とはどんなものなのか、また、不倫の場合に作成した公正証書は無効にしたり取り消すことが可能か否かを解説してみたいと思います。

そもそも公正証書って何?

公正証書というのは、国の公証事務を担う公務員が公正役場で作成する書面です。

つまり、公の証明書ということですね。

そして、その公正証書の作成をする人を公証人といいます。

公証人になる人は、国で裁判官、検察官、弁護士、法務局長、司法書士などを30年以上、法律関係で仕事をしていた人から法務大臣が任命して執務することになります。

そして、その公証人が執務する場所(職場)が公証役場と呼ばれています。

公証役場では、主に元裁判官として働いていた大ベテランが公証人になることが多いようです。民事裁判等では、この公正証書を有効な証拠として扱うことが多くなります。

強い効力を持つ公正証書

離婚の際にも公正証書を作成しておくことで、たとえ、元パートナーが約束の内容(例えば養育費など)の支払いに応じなかった場合には、裁判を起こさなくても強制執行をかけることができます。

公正証書作成のメリット

協議離婚で慰謝料の支払いを口約束したとしても、支払いが遅れた際に支払いを要求しても「慰謝料を支払うなんて言った覚えはない」と支払いに応じないケースは五万とあります。

公正証書を作成しておけば、このような場合でも強制執行をかけることができるのです。

これが、公正証書作成の大きなメリットではないでしょうか。

公正証書の内容は簡単に変えられない

公正証書は、公正証書を依頼した当時者双方が内容を理解して合意をしているかどうかを厳しい手続きで作成しているため、簡単に意思内容を覆す(くつがえす)ことはできません。

さらに、公文書だということで、原本は公正役場で20年もの間保管されるので内容の変更や取り消しは一からやり直さなければならないのが基本です。

公正証書

公正証書の取り消しや無効ってあり?

公正証書の効力は思った以上に強力で絶大でしたね。

それでは、一度公正証書を作成してしまうと取り消しや無効はできないのでしょうか。

法律に基づいた行為ならOK?

公正証書と言っても、錯誤や詐欺、強迫によってならしょうがないでしょ?と思ってしまいますが、なかなか簡単にはいかないようです。

・錯誤とは、まちがい、あやまり

・詐欺とは人をだまして財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりする行為

・強迫とは相手を自分の意に従わせること

民法では、法律に基づいた行為の要素なら錯誤があった場合に無効とすることができます。

しかし、これについては当事者に重い過失が認められた場合には無効を主張することはできません。

また、詐欺や強迫での意思表示は取り消すことができると民法で定められています。

公正証書上で合意した場合、これらの無効や取り消しの主張を禁止する法律はありません。

したがって、これらを主張することは可能です。

では、パートナーが不倫した場合に作成した公正証書の取り消しはできるのでしょうか?

パートナーが不倫したケース

婚姻関係にあるパートナーが不倫をしていた。

ショックですよね、許せませんよね、悔しくて悲しくて...。

その思いをぶつけるように、不倫をしたパートナーに約束をさせます。

「もう2度と浮気はしない、不倫はしない、これ以上悲しませることはしない」と。

でも、口約束ではダメです、口約束ほどいい加減なものはありません。

そこで、登場するのが公正証書の効力です。

あなたは、パートナーが2度と不倫をしないように誓約書を書かせることにしました。

誓約書に書く内容はどのようなものでしょう。

誓約書作成のポイント

パートナーが不倫をしていたことを認め、謝ってくるようであれば「もう2度と不倫や浮気はしない」といった旨を誓約書にして書いてもらいましょう。

ポイントは、不貞行為を認めた旨と謝罪の言葉を具体的に書かせることです。

これでも、パートナーによる裏切り行為が許せなかったら慰謝料を請求することも可能です。誓約書には、慰謝料請求の金額や支払い方法、支払い時期も明示しましょう。

そして、誓約書に書いたことに違反した場合は賠償金を支払うように書かせるのが大きなポイントになります。

この誓約書の法的効力を高めるのが公正証書なのです!

ところが、不倫をしていたパートナーに慰謝料の請求をしなかった場合にあとになって「やっぱり慰謝料の請求をしたい」とか「慰謝料の請求があり支払うことを約束したが金銭にゆとりがなく支払いができない」などというケースもあります。

そのような公正証書の変更や無効、あるいは取り消しってできるのでしょうか?

公正証書の取り消しや、無効は可能

公正証書で合意した内容を取り消したり、無効にしたりする主張を禁止する法律はないと触れましたが、実際はどうなのでしょう。

調停や裁判で争う?

公正証書上に合意した内容を無効あるいは取り消しの主張を禁止する法律がないということは、公正証書に書かれた内容について裁判でで争ってはならないという法律もないということになりますよね。

不倫問題で作成された公正証書で、慰謝料の請求を無効にしたり取り消したりすることは可能なのでしょうか。

このような場合、公正証書に書かれた内容を大幅に変更したい、または、取り消したいという要求は裁判を起こして争うことは可能です。

ところが、理論上は可能なのですが争う際には不利点があるようです。

公正証書は公の証明書であることから、無効や取り消しが認めづらいといった現実もあります。

公証人は法律のプロ

公正証書を作成するのは、元裁判官だった人が多くいます。しかも、裁判官を30年以上も経験している法律のプロ中のプロ、大ベテランなのです。

その公証人が合意した公正証書は、その証拠が明確に公正証書に残っているということになります。

証拠が明確に残っている以上、錯誤や詐欺、強迫などがあったという主張は認められにくくなります。

弁護士を依頼して裁判を起こしたとしても、慰謝料の支払いを無効にしたり取り消しにすることは難しいようです。

弁護士を依頼して裁判を起こしたとしても、必ず主張が通るとは限りません。

また、弁護士費用も高額になる可能性も高くなるので、よく考えてから裁判を起こすようにしましょう。

それでは、不倫をしたパートナーの相手が慰謝料の支払いを滞った場合はどうなのでしょう。

効力がない誓約書

婚姻関係にあるパートナーが不倫をしてしまい辛い思いをしたので、パートナーの不倫相手に幾つかの約束事を誓約書に書かせたとします。

誓約書には「もう2度と○○さんと会わない」と謝罪や「不倫をしてしまったので慰謝料として毎月5万円支払う」などの約束内容が示されています。

慰謝料の支払いは100万円ですが、いっぺんに支払うのは無理だと言われ毎月5万円ずつ支払うことで合意して誓約書に書かせたのです。

しかし、ただの誓約書や示談書では、毎月5万円支払われるはずの約束が守られていなくても無理やり支払わせるわけにはいきません。

「誓約書に毎月慰謝料として5万円支払うと約束したんだから絶対支払って!」などと言っても強制的に取り立てることは不可能なのです。

どうしても、支払わせたい場合は裁判を起こさなければなりません。

裁判を起こして判決が出たあとに、強制執行手続きを踏んでから不倫相手の財産や給与を差し押さえたりして、支払われることになります。

でも、この方法はかなりの労力と時間を要して疲れませんか?

なにしろ、裁判は色々な書類を作成したり、上記にあるように弁護士を依頼するとなると費用もかかります。

そのようなことを考えると最初から公正証書を作成しておけば安心ですね。

とは言え、公正証書は双方の合意のもとで作成されるものです。

必ずしも作成できるものではないことも念頭に入れておかなければなりません。

それでは、仮にパートナーが不倫をした相手と公正証書を作成できた場合はどうなのでしょう。

基本、公正証書の変更や取り消しはNG

基本的には公正証書の変更や取り消しはできないものと考えた方がよさそうです。

ですが、次のようなケースもあります。

婚姻関係にあったパートナーが不倫をして辛い思いをしたので不倫相手に慰謝料を請求しました。本当は一括で100万円請求したかったのですが、相手に一括では無理だと言われたので分割で毎月5万円ずつを支払うことで合意して公正証書を作成したのです。

ところが、この数ヶ月不倫相手から慰謝料の支払いが滞っています。

どうやら、不倫相手は公正証書の内容を変更したいようです。

不倫相手は会社の景気が悪く、当の不倫相手がリストラされてしまったとか。

そのため慰謝料の支払いを待って欲しい等の変更主張をしたいようです。

そんな事情は、こちらには関係ありません...。

ですが、公正証書の効力である強制執行を利用して財産や給与を差し押さえたくても、差し押さえるものがないのです。

このように、やむを得ない事情があるケースでは双方が合意すれば内容を変更は可能になります。

公正証書の内容は当事者の合意のもとで作成されているので双方が協議し、合意すれば内容も当然変更することが可能になります。

但し、合意できればの話です。

不倫相手である当事者とあなたの間で合意ができるのかどうなのかは定かではありません。

公正証書の無効、取り消しの主張は思い通りにはいかないことも肝に銘じておきましょう。

まとめ

ここまで、公正証書の説明をしてきましたが、日頃あまり馴染みのない言葉なので少し難しかったかもしれません。

また、実際に法律に触れる機会も少ないため公正証書の重要性も身近ではありませんよね。

でも、いつ自分の身に降りかかるかもしれない離婚問題、慰謝料問題、親権問題などがあります。

その際には、公正証書の意味を少しでも分かっていると有利になることがあるかもしれません。

今回の不倫のケースでも公正証書は強制執行などの効力があること、しかし、当事者の双方が合意すれば変更も可能なことが分りました。

不倫で作成された公正証書でも変更ができるようなので、何かお困りの際は弁護士または公証人に相談だけでもしてみてくださいね!

 

 

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