2020-01-01

おひとりさま終活とは?|よくある事例も行政書士の目線で解説

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おひとりさま終活とは?|よくある事例も行政書士の目線で解説

この記事の目次

結婚適齢期を迎えても独身であることを選ぶ(あるいは独身でいざるを得なかった)人のことを、最近では「おひとりさま」と呼ぶことがあります。

おひとりさまは、家庭を設けないぶん収入をほぼ自分の自由に使えることから、趣味や実益にお金をかけていることも多く、同時にしっかりと貯蓄をしていることもしばしばです。

とは言いつつも、実際に自分が亡くなったとき、葬儀や埋葬、残された財産の処分をどのようにするかは大きな課題です。

その課題を自分が元気なうちに解決しておこうと、おひとりさまが終活を始めるケースもしばしばあります。

この「おひとりさま終活」の実情と、終活にあたって特に留意すべきことは何か、私の経験を踏まえてご紹介したいと思います。

 

1 独身者向けの終活は50代から

 

独身者が終活を始めるのは、私の経験上から言えば「50代から」です。といっても、50代の人がどんどん押し寄せるわけではありません。

ありがちなきっかけとしては、次のようなものがあげられます。

 

〇親に自身の老後などの話を説教された

〇甥っ子や姪っ子に自身の老後の話をされた

〇テレビやWebで終活特集のことが目に留まった

〇健康を害して老後のことが心配になった

〇保険の切り替えなどで自身の将来のことが気になった

〇職場の同僚や友人が親の終活を始めた

 

私が今まで対応した方々の中で、自分自身が老後のことを気になって終活を始めたという人は1人もいませんでした。

むしろ、周りに影響されて話だけでも聞いておこう、という感覚でご相談に見えたのが大半です。

 

最も多いのが、退職を控えて「第2の人生」をリアルに考えなくてはならなくなった時、終活を考え始める人です。

退職金はもらった、でもそのお金は施設に入るために取っておかなくてはならない、では施設に入所する手続きを誰がしてくれるのか…など、やがて直面する老後について考えたとき、はじめて「終活」の文字が頭に浮かぶようです。

 

2 健康を害することがおひとりさま終活の契機に

 

先ほどの章で「おひとりさま終活」のきっかけをお話ししましたが、その中でも「健康を害すること」が、終活のきっかけの中でも一番多いです。

実際に、私がお受けした相談の事例をご紹介しましょう。

 

Aさんは49歳の女性で、地方都市の信用金庫にお勤めの方です。

独身ではありますが、趣味のバイクツーリングなどで多くの友人に恵まれ、寂しさを感じることはなかったそうなのですが、状況はある日一変します。

 

Aさんは人間ドックを毎年受信していますが、ある年の検査で乳がんの疑いがみつかりました。

その後、精密検査をした結果、ステージ1のきわめて初期の乳がんと診断されたのです。

 

Aさんは人生設計をきっちりと組み立てていたので、がん治療にかかる医療費の大半は保険金で賄うことができました。辛かった放射線治療も数回受け、がんを根治させることができたのです。

 

でも、治療の間は大好きなバイクにも乗れず、入院中もお見舞いに来てくれる友人の元気さに羨ましさが募り、根治後はバイクに乗ることが少なくなってしまいました。

放射線治療のせいでかなり体力も落ち、倒れているバイクを起こすのも一苦労になってしまったので、よけいに趣味から離れてしまったのです。

 

そこでAさんは考えたそうです。

趣味が続けられなくなったら、自分には本当に何も残らない。

友人は多いといっても、結局友人であり、本当に親身になって自分のことを考えてくれる人は誰かいるのだろうか、と。

 

財産や自分の遺骨の処分を任せられる、そこまでの友人なんていません。

やはり、法律に従ってあらかじめ自分で終活をしておいた方がよいのではないか、というわけで、Aさんが私の勤める事務所にお越しになったのです。

 

その後、私がAさんの担当をさせていただき、遠方にお住いのご両親や、隣県にお住いの弟さんにもお会いして、何かあったときは私共の事務所が動くこと、最終判断は弟さんにお願いすることを生前に定めることができました。

合わせて、財産については生前に遺言状を残し、私共が作成のサポートをさせていただき、最終的にはご自身がお勤めの信用金庫の貸金庫に保管しておくところまで段取りができました。

 

この時は、Aさん自身がしっかりとビジョンをお持ちだったことと、事務手続きがもともと苦手ではなかったので、ご相談から整理まで3か月ほどで終えることができました。

 

3 おひとりさま終活の基本は「財産の処分」

 

おひとりさま終活において、特に考慮したいのは次のような要素です。

 

〇所有する財産の処分や分与

〇施設への入所やその手続きの代行

〇葬儀や納骨の意向を残す

〇亡くなったことを誰にどこまで伝えるかのリストアップ

 

まず、所有する財産の処分は、できる限り生前に行っておきたいものです。

ですが、株式などの投資商品はこれからの生活の原資として活用できるものですし、将来的に入ってくる退職金は未知数ではありますが、終活に向けて見込んでおかないといけません。

 

なぜ財産を見込んでおく必要があるのか、それは「施設への入所」など、自分に何かあったときに必要なお金を見込むことになるからです。

特に重要なのは「施設への入所費用」「病院入院費など医療費用」です。これらはあらかじめ定期預金などに分けて預金しておくことをお勧めしています。

 

葬儀や納骨についてもぜひ考えておきましょう。

最近は葬儀を簡素化する傾向が強いので、家族葬レベルの葬儀を行って終わりになるパターンが多いです。

納骨も同様で、あらかじめ寺院などと永代供養の申込をしておくなど、墓石を建立してその維持管理のことで遺族を困らせないようにする人が多いようです。

 

最近、大手の葬儀社などでは生前会員制度を設けているところも増えてきました。

あらかじめ会員になっておけば、自身の葬儀のサービス内容などを決めておくことができます。

そこまで段取りしておいて「何かあれば〇〇葬儀社に連絡してくれ」と伝えておけば遺族も安心です。

 

意外とみなさんが気にされるのは、自分の死をどこまで誰に伝えるのかということ。

先ほどのAさんの場合は、所属しているツーリングクラブの会長にだけ、それも四十九日が済んでから伝えるようにとエンディングノートに書き残しました。

Aさんいわく「お供えなどを考えられて気遣いをさせたくないので」四十九日以降にしたのだとか。

 

生前のうちにどこまで伝えるかを考えるのは難しいかもしれませんが、自分に何かが起きたときの緊急連絡先として考えれば、そんなに悩むことはないでしょう。

 

実際、認知症などにかかってしまい生前であっても自分の意思を表示できない状況になることはあり得ます。本当に元気な時、自分も関係する家族もみんな元気な時に終活をしておくことは大事なのかもしれません。

 

4 困ってしまう「他人への財産分与」

 

財産の分与は遺言状によって、その分与先などを定めておくべきです。

一般的に「故人の配偶者に2分の1、故人の子どもたちに残りの2分の1を与え子どもの人数分均等に分割する」と言われており、一般的に「法定相続人」と呼ばれます。

もし、このルールによらずに「弟に全部渡す」などと決めたい場合は、遺言状を残しておくことになります。

 

遺言状を書く前に、私たち行政書士が調べることは「本当に相続人がいないか」どうかです。

中には、ご本人も知らないような家族関係が存在する可能性があるからです。

 

例えば、離婚して母親と一緒に暮らしてきた、実の父親とは子どものころ以来会っていない…と聞かされていただけ。

実際には両親が別居していただけで、父親と母親は戸籍上夫婦のままだった。

この場合、もし娘の自分が死んでしまえば、縁も途絶えてしまっている父親に相続の権利が発生します。

 

遺言状は、法律上の財産分与権を超える権利を持っています。

ですから、法的に有効な書式で作られている場合、「財産をすべて愛すべき友人Y子に渡す」と書かれていた場合、家族や親族を飛び越えてY子さんが財産を相続することも可能なのです。

 

ただし、あまりにも度が過ぎている遺言状は、いくら合法的に作成されたとしても、相続人の遺留分を侵害しているとされる場合もあります。

遺留分とは、法定相続人のうち、兄弟姉妹に対して認められている最低限の相続割合のことです。直系尊属のみが相続人の場合には相続財産の3分の1、それ以外の場合には相続財産の2分の1が「本来与えられてしかるべき財産」とされています。

 

遺留分の配分を超える相続財産を他人に渡そうとした場合、遺留分について兄弟姉妹などから訴え(減殺行為)がなされれば、遺言状の内容とは異なる相続が行われる場合もあるのです。

 

なお、遺留分の相続には特殊なルールがあり、兄弟親族が亡くなっている場合、その子どもに権利が移行するのです。

これは私の実経験なのですがが、祖母が亡くなった時、5人の子どもたち(私の実母も含む)も既に他界している状態になっていました。

その子どもたち(祖母から言えば孫)に相続権が移行され、結局16人の孫全員の意思表示を書面にして相続を完了させたことがあります。

 

財産の分与というのは、本当にシビアな案件です。できることなら、生前から徐々に財産の整理をお願いしたいところではあります。

 

5 本人とご両親の意見が相違することも

 

さまざまなご本人の思いをもとにエンディングノートや遺言状を作り、終活がこれで終わるかと思いきや、意外な難関が待ち構えている場合もあります。

 

おひとりさまの終活なので、ご両親がご存命のことも多く、ご本人とご両親との意見が相違することがあるのです。

例えば「骨は大好きな海に散骨」を希望しているのに、ご両親は「先祖代々の墓がある」として散骨を認めない、などのようなケースがしばしば見受けられます。

 

実際に私が直面したのは、両親とご兄弟2名に均等に胃酸を分けるべきだといわれた長女のS美さんでしたが、弟のH男さんとはもともと折り合いが悪く、付き合いも疎遠。

そこで兄のK彦さんにH男さんの分まで財産を渡したいと遺言状を作ったのですが、それを知ったご両親が激怒、さらにご両親から話を聞いたH男さんとその妻も乱入と、事態が深刻になってしまいました。

 

最終的に、ご両親がS美さんの「私が頑張って稼いだ財産の分配を私が決めて何が悪い」の声に折れ、H男さんたちの主張は却下。老後のことや亡くなったときのこともK彦さんや甥っ子さんがサポートしてくれるとのことで一見落着となりました。

 

このように、財産が絡むと様々な利害が生まれ、人間性が見え隠れしてしまうものです。

悲しいことではありますが、これを機に人間関係の整理も終活の一環として考えてみるのもよいかもしれませんね。

 

6 まとめ

 

おひとりさまの終活は、周囲も、時には自分も「なぜこんな段取りをしているのだろう?」と思ってしまうこともあります。

今がこんなに元気で、一人で過ごしていても何ら問題がないのに、終活を考えているのが不思議に思えるからです。

でも、今は元気であっても、明日が元気でいられる保証はないのです。

特に40代から50代にかけては、仕事においても責任ある立場に就き、仕事量も増えるし、ストレスも増える年代。

それらがあなたの心身に負担をかけ続けることで、健康が損なわれる可能性もあります。

健康を損なった結果、心身に障害が残るような状態になると、その時点であなたのライフプランは見直しを迫られます。

行政書士は、終活はもちろんですがライフプランの見直しのご相談も対応できますから、この機会に「万が一の備えづくり」も考え、あわせてご相談して見られることをお勧めします。

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