2020-02-02
行政書士が終活アドバイザーになるには?勉強方法と仕事内容を紹介
この記事の目次
終活という言葉が当たり前のように聞かれるようになった今、さまざまな業種において「終活」を題材にした商品やサービスが登場しています。
そのような時代の中、行政書士は公的申請書の代理作成などにとどまらず、終活関連業務の相談も増加しています。
ですが、法律上の事ばかりを重視して、終活に欠かせない「人生の最後の終え方」という、個人の気持ちに沿うべき部分について、きめ細かいサービスが提供できているかと言えば、疑問が残ります。
今後は、「終活アドバイザー」などの専門的な資格を身に着けて、個人の気持ちに寄り添った業務が行えるようになることが、これからの行政書士に必要なスキルであり、求められている役割なのではないかと思えます。
では実際に、終活アドバイザーになるにはどうすればいいのか、どのような勉強が必要なのかを調べてみました。
1 通信教育で取得できる資格が大半
まず、終活に関連する資格を調べてみると、民間団体が主催する資格ばかりでした。
また、それぞれの資格は「スクーリング」「通信教育」「eラーニング」など、さまざまな学び方が用意されていますが、大半が通信教育タイプでした。
つまり、行政書士として働きながら、余暇の時間を活用して自分の都合のいい時間に勉強することができるのです。
資格取得のためにかかる費用ですが、一般的な通信教育の場合は30,000円程度で済むようです。
もし、資格取得後に資格を名乗ってビジネスなどを行う場合は、団体に加入して認定証などをもらう必要があります。その際に「登録料」「認証料」「証明発行手数料」などの名目で費用を請求されることもあり、団体に所属すれば「入会金」や「年会費」などの費用をさらに請求されることもあります。
支払わねばならない費用を安いと見るとか高いとみるかは、人それぞれの考え方なのでしょうが、資格を活かしてどのような活動をしたいのか、その状況と天秤にかけて判断されるのがよいでしょう。
なお、終活関連の資格については、終活関連の資格に関しては下の記事に詳しく記載しています。
【関連記事】行政書士が終活アドバイザーとして活躍するには?仕事の探し方もご紹介
2 勉強の内容は「心理学」の面も含まれる
終活関連の資格を取得する際、学ばれている内容には次のようなものがあります。
- 財産について
- 連絡について
- 葬儀や埋葬について
- 家族や親族との相談について
それぞれの項目について、終活の際に必要な準備やあらかじめ調べておくべきこと、専門家に相談すべきことなど、具体的になすべきことを学んでいくものが大半です。
これらとは別に、心理学的な要素について学ぶ場合もあります。
具体的には、相談者が終活を考えるにあたって抱える不安について、資格者である私たちがフォローをするために必要な対応について、心理学的なアプローチができるように必要な知識や技術を学ぶものです。
具体的には、以下のようなケースの場合に、心理学的なアプローチが求められます。
- 自身の意向と家族や親族の意向が一致しない
- 自身の意向を実現するだけの費用がない
- 一人身のため、意向を伝える人すらいない
これらの問題に直面すると、当然ですが相談者の方はストレスを抱えることになるでしょう。最悪の場合、こんなに問題ばかり発生するなら終活なんかやめた!と思ってしまう人もいるかもしれません。
問題に直面して、ストレスを抱えてしまう相談者のために適切なフォローを行うことも、終活の専門家に求められているスキルであることは間違いありません。
これらのスキルは、行政書士としての知識や技術を学ぶだけでは得られないものなので、資格を取得することでかなり有益となるでしょう。
心理学と言っても、そんなに難しい専門的な知識や技術を学ぶわけではありません。
代表的なのは「傾聴」です。傾聴とは、とにかく相手の話をしっかり聞き、相手が安心して自分の思いを打ち明けられるような雰囲気を作るために用いられます。
特に終活においては、相談者の意向を最優先する必要がありますから、相談者から信頼を得られる相手になることが極めて重要です。
3 専門家として具体的な方法を提案するのが仕事の基本
終活アドバイザーなど専門資格を取得すると、終活に悩む人たちにその手順や具体的な方法を分かりやすく説明することができるでしょう。
特に、官公庁への申請や公的な文書の作成においては、専門用語を多用することになりますが、終活アドバイザーなどの専門資格を活用して、難しい言葉でもかみ砕いて説明することとができるようになります。
また、行政書士であることを活かして、公的機関に申請する書類等の作成を代行したりすることも業務として行うことになるでしょう。
一般的に、終活で行うべき仕事の内容は次のようなものがあります。
- 財産関係→目録の作成など
- 住居関係→インフラ関係契約の解除、住居の処分など
- 相続関係→相続税の申告、不動産登記の変更など
- 葬儀関係→宗教関係者への相談、葬儀社への相談や取次など
- 埋葬関係→墓石業者への相談
- その他→亡くなったことを知らせる範囲の選定
これらのことを1人でこなそうとするのは、かなり大変なことです。
だからこそ、終活アドバイザーなどの専門家の手助けが必要なことが、ご理解いただけると思います。
行政書士として、実際に終活のお手伝いができることをさらに掘り下げて考えてみましょう。
- 財産関係→財産目録の作成、作成に必要な資料(登記簿等)の収集
- 住居関係→電気・ガス・水道などの解約、住居の売却(あるいは相続)
- 相続関係→相続税申告書の作成、登記に関する諸手続き
- 葬儀関係→宗教関係者や葬儀社の紹介
- 埋葬関係→火葬場の使用申し込み、納骨場所の確認、納骨場所がない場合は生前中の申し込み、納骨の手はず
- その他→連絡先一覧の作成(逝去時の連絡先として)
これらのうち、登記や税金に関することは行政書士の本領発揮と言える部分です。
ただし、税金関係については「税理士」と言う専門的な資格者がいますから、行政書士はどちらかと言えば深刻に必要な資料の作成までが実際の業務になるでしょう。
あと、埋葬関係の中でも「火葬場の使用申し込み」や「納骨場所の確保」は、行政書士が行う仕事としても一般的です。
特に「納骨場所の確保」は、相談を受けてから場所を探すような場合も多いので、場合によっては場所探しの相談にも乗る必要があるでしょう。
墓地などは公営もあれば寺院経営のものもありますので、没後にどのような供養を望むかなどを考慮して場所を探す必要があるでしょう。
また、生前に手続きが行える場合はそのサポートを行うことも出てくるでしょう。
終活の相談を受ける中で、相談者のさまざまな要望に対応できるよう、終活アドバイザーなどの資格を取得しておくことは極めて重要です。
と言うのも、行政書士としてのスキルだけでは、葬儀業界や墓石業界で使われている専門用語や一般的な手続きの流れがわかりにくいからです。
特に終活は、多岐にわたった対応が必要となるので、専門資格を取得しておくことで、くまなく相談者の相談に対応できる強みが生まれるでしょう。
4 行政書士として求められること
私たち行政書士の立場になると、遺言状など法的に有効性が確実に求められる書類について、正確に作成し、また相談者の意思を尊重して忠実に実行することが求められます。
例えば遺言状の作成の場合、その内容は相談者の意向を踏まえ、相談者から承諾を得て作成を代行しなくてはなりません。
その後、第三者が有効な書面であることを証明するための手続きとして公証人役場での手続き、遺言状の改ざんや紛失を防ぐために金融機関の貸金庫を確保し実際に収めるところまで行う場合もあります。
これらの行為は終活アドバイザーなどの専門的な資格があればよいわけではなく、国家資格である行政書士であるからこそ行える業務です。
さらに、行政書士が終活アドバイザーの資格を取得することで、とかく事務的になりがちな手続きなども、よりきめ細かな対応ができて相談者が安心してくださるのではないかと考えます。
5 相談者の心のケアも役割の一つ
終活アドバイザーの大事な役割には「心のケア」もあります。
実際、終活をしようとしている人には、それぞれの事情があります。
- 子どもに迷惑をかけずに一生を終えたい
- 子どもが頼りにならないから没後の準備をしておく
- 子どもと仲が悪いので没後は頼ることができない
- 子どもなど頼れる親族がいないので自分たちが段取りをする
これらを読んでみると、終活イコールネガティブと言う一面が浮かび上がってきます。
考えてみれば、誰だって自分の「死に支度」など積極的にしたくはありません。
自分たちの意向を理解してくれている子どもたちなどがいれば、前もって就活しなくても葬儀や納骨などは問題なく行ってくれるからです。
でも、最近は終活をする高齢者が増えている。
それはつまり、子どもたち世代との関わり方が昭和の時代に比べて変わってきたのでしょう。
「子どもが親の面倒を見るのは当たり前」「長男は家を継ぐのが当たり前」と言った時代はすでに過去となり、それぞれがそれぞれの家を守ることを優先した結果、親である高齢者世代は自分で自分の「死に支度」を行わざるを得なくなってきたのではないか、と言うのが私個人の見解です。
終活がネガティブな活動である以上、その部分の心理的なフォローは終活カウンセラーなどの専門的な資格を有している人が行うべきところなのでしょう。
相談者が抱えている辛さや寂しさなど、ネガティブな気持ちを受け止め、できる限り穏やかな人生の終わりを迎えられるように、現実的な準備をできるようにすることが大事なのです。
最近は少子化社会や晩婚化の影響もあり、頼りになる子どもたちがいない悲しみを抱えている相談者も増えてきます。
さまざまな思いを抱えた方々と向き合って終活を行うことを考えると、終活カウンセラーの役割の中でも「心のケア」は特に重要になってくるのではないでしょうか。
心のケアもできる相談相手としてアピールできれば、行政書士としての仕事にも幅が生まれると思われます。
将来的には「終活専門」などのアピールポイントを掲げて、新たなビジネスチャンスを獲得できる可能性もゼロではありません。
6 まとめ
家族の単位が「核家族」になったのが昭和、さらに結婚して子孫を残すということすら任意になってきたのが、平成の時代だと私は思います。
家族の在り方が変わってくると、案ずることなどなかった「死に支度」のことまで生前に行っておかねばならなくなりました。
令和の時代は、まさに死に支度を自分で行うのが当たり前になってきた、そんな時代になるのではないでしょうか。
つまり、自分の人生の終わりをある程度定め、専門的な知識を有する人にそのサポートや手続き代行を依頼することが当たり前の時代になるのかもしれません。
そんな時代だからこそ、終活アドバイザーなどの専門家の存在は必要不可欠になるでしょう。
特に、終活カウンセラーなどの専門的な知識は、多くの人々の終活を支援するために欠かせないものになります。
行政書士の資格と、終活カウンセラーの知識。
この2つをうまく活用することで、終活のサポートは十分行えると思いますし、新たなビジネスチャンスとなりえるのではないでしょうか。