2020-02-02
空き家問題と活用方法とは?|よくある相談も行政書士の目線で解説
この記事の目次
相続の一環で実家を相続したものの、既に自分はマイホームを建てているため、当面実家に誰も住むことはない。
それでも、草を伸ばしたりすると隣人に迷惑をかけてしまうので、必要最低限の手入れのために、年に数回わざわざ里帰りして、1日を作業に費やすことになってしまう。
これは、実際に私が相続でご縁のあったAさんの実情です。相続とはいえ、当面使うことのない空き家を維持管理するために、かなりご苦労されているとのことです。
最近、空き家の維持管理に手をこまねいている人は多いのですが、実際に得する活用方法は存在するのでしょうか。
1 空き家の活用方法は限られている
空き家を活用する方法をいくつか考えてみますと、思ったより選択肢がないものです。
- 借家
- 貸し事業用物件
- 民泊・シェアハウス
- 倉庫
この中で、最も確実なのは「借家」です。のちの章で詳しくご紹介しますが、不動産屋とニーズが一致すれば、こちらも借り主が確保できて、一定の家賃収入が得られます。
それでいて、今まで苦労していた空き家の維持管理の手間がなくなるのですから、まさに一石二鳥と言える状態になるのです。
その他の選択肢を見てみると、事業用物件として貸し出すのも方法の1つのように思えます。
事業用物件として代表的なのは、喫茶店などの飲食店、保育園や児童クラブ・児童デイサービスなどの福祉事業所などです。
ですが、閑静な住宅地の一軒家を事業用物件で貸すというわけにはいきません。地域には「用途地域」と言う土地利用の制限が加わっている場合もあり、空き家だからといっていきなり喫茶店にしたり、児童デイサービスなどの事業用物件として使えない場合もあります。
それに、騒音など周辺の住民に迷惑をかけるような用途ではなかなか使用できないものです。倉庫代わりに使うとしても、不特定多数の人々が、たびたび自動車を乗り付けては去っていくような状態になると、周辺が住宅密集地であればあるほどトラブルのもとになってしまいます。
民泊・シェアハウスも同様です。民泊は旅館業法の改正で、新規の民泊開設のハードルが上がってしまっている状況です。これも事業用物件の例と同じで、いきなり閑静な住宅地に外国人観光客が安宿として民泊を利用するようになれば、周辺住民から苦情が来る可能性は十分にあります。
このように、空き家を何らかの形で活用しようとしても、その大半は「周辺住民への配慮」や「法律上の使用制約」により断念せざるを得ない場合も多いのです。
2 賃貸物件に適した空き家とは
では、賃貸物件に適した空き家とはどのような条件を満たしている物件なのでしょうか。
現実を考慮すると、以下のような条件を満たしていることが望ましいと考えられます。
- 10年以上空き家になる状態が続く
- 4人家族が入居しても余裕がある
- 周辺の賃貸物件の人気が高くなっている
まず、空き家になる期間が10年以上になるかどうかは極めて重要です。
貸す側の気持ちは「やがては自分たちが帰ってきて住み始める」などの事情もあるのでしょうが、借りる側の気持ちになると「少しでも長い期間借りておける物件」に住みたいものです。
特に子どもが小さい時期に借家で暮らし、やがてマイホームを建てると言う家族は多いです。
それまでの、子どもが成長して個別の子ども部屋が必要になるまでの間、借家暮らしを続けたいと言うニーズもかなりあります。
そういう意味で言えば、子どもが生まれてから小学校高学年に近づく、一人だけの部屋が必要になってくる年頃になるまでの10年程度は、同じ場所で暮らしておける環境が理想です。
ですので、10年間住み続けることのできる物件であれば、借りてくれる人も多いというわけです。
貸す側としては、10年間誰かが住んでくれて、家の手入れをしながら使ってくれながら家賃収入も見込めるのでいいことづくめのように思えます。
ただし、貸し出している期間のうち、空き家の劣化にまつわる雨漏りなどのトラブルが出ないようにすることも必要です。
修繕が絶えず、不便な環境ばかりの借家を好き好んで借りる人は誰もいませんから、賃貸物件にする前には、必要な修繕やリフォームを行うなど対応しておきましょう。
そして、子どもと両親が一緒に暮らすとなれば、当然「4人家族」になるでしょう。
同じ賃貸物件でも、両親と子ども2人が入居し、それぞれにプライベートスペースが確保できるぐらいの広さでないと魅力のある賃貸物件とは言えません。
参考になるかどうかわかりませんが、私が仕事上お付き合いのある不動産経営者にお尋ねすると、借り主が見つかりやすい一軒家の理想の広さは、リビングが12畳以上であり、その他に寝室や子ども部屋として使える部屋が人数分確保できる物件なのだそうです。
その地域のニーズに対応できる空き家があれば、比較的借り主も見つかりやすいと考えてよいでしょう。
さらに、周辺の賃貸物件の人気が高くなっていると、これはまさに「売り手市場」なわけですから、積極的に空き家を賃貸物件として活用しましょう。
まず、あなたの空き家の周辺の賃貸物件が、どの程度の広さの物件が多いのか、自分の所有している空き家と同レベルの物件がどれくらいの家賃で貸しだされているかを確認しておくと、現実に即した売り込みも可能でしょう。
また、賃貸物件として活用するために、不動産屋に仲介を依頼するケースが多いです。
その時、周辺の賃貸物件の相場を把握しておかないと、不動産屋のいいなりになって契約してしまい、損をしてしまうこともあり得ます。
調べた結果、空き家周辺の賃貸物件が人気を集めている時は、空き家を賃貸物件にするチャンスです。その際は、不動産屋も賃貸物件が欲しい状態ですので、あなたの希望する家賃で契約することも可能です。
ちなみに、家賃は駅やバス停などの公共交通機関から遠くなるほど下がります。
その他、空き家の築年数が古ければ古いほど家賃も下がります。また、駐車スペースの有無や駐車可能台数も家賃設定に影響を及ぼす部分です。
まずは、周辺の賃貸物件がどの程度の家賃で貸しだされているかを確認し、同程度の築年数や、同程度の間取りの一軒家の家賃相場を把握したうえで、家賃の月額を決めることをお勧めします。
3 期間を限定して空き家を賃貸物件にすることができる
空き家のままになった実家を所有している人にとって、空き家の管理に掛ける手間とお金が惜しいと思っている人も多いでしょう。
かといって、売却してしまうのはためらわれるという人も意外と多いのです。
自分たちのマイホームは、子どもに譲り渡して、最終的に自分たちが故郷に帰ってきて空き家となっている実家に住むことを考えている、そういう人も意外と多いのです。
当然、売却をすることもできないので、空き家の管理をいかに手間をかけずに行うかを考えなくてはならなくなってしまいます。
賃貸物件にしてしまえば解決しそうなものですが、この時「自分たちの都合のいい時に返してもらえるのか」と言う不安が生じます。
今の年齢が45歳、60歳で退職する予定なので、15年間だけ借家として利用してもらい、自分が60歳になった時には返してもらいたい、と言う虫のいい話が通用するのか不安になるものです。
この「一時的に空き家を賃貸物件として活用する」と言う選択肢は、あまり思いつかないものです。
実際、持ち主が希望する期間だけ空き家を賃貸物件にすることが出来ることはあまり知られていません。ぜひこの機会に空き家を賃貸物件にすることを検討してみましょう。
なお、空き家を貸しだす期間については、契約書で明記することも可能です。
賃貸物件については、一般的に「定期借家契約」を締結しますが、この契約で明記する期限内に限って空き家を貸しだすことができるように定められています。
もちろん、定期借家契約は借り主の権利も保護されている契約です。
契約書に定めている事項については、持ち主の権利が守られる仕組みになっていますから、ここに期限を定めておくことで、のちにトラブルとならないように対処しておくことが可能です。
ただし、この契約方法では明確に賃貸期限が決まっているため、自分の希望する年数では物件を借りることが出来ないデメリットもあり、借り主が見つからない場合も出てきます。
最終的には、一般的な相場よりも安い家賃設定にしてようやく借り主を見つけなくてはならないケースも出てきます。
年数をとるか、家賃収入をとるかと言う二者択一になってしまう可能性もあることだけはあらかじめ理解しておいてください。
4 賃貸物件の管理も委託しておこう
賃貸物件にした場合、借り主が見つからない間の管理はどうなるのでしょう。
一般的には「管理委託契約」などを結び、不動産屋などにその間の清掃などを任せてしまう場合が多いです。
また、清掃などだけではなく、電気やガスなどの定期的な点検も受託者が行ってくれるので維持管理に関する行為のすべてを不動産屋などが代行してくれると考えていいでしょう。
また、借り主が見つかった後でも、家賃の収受や修繕の手配、居住者との間に生じたトラブルの初期対応や漏電検査など法的に義務づけられている定期点検の対応なども、
管理委託契約の中で対応してもらうことが可能です。
なお、管理委託契約にかかる費用については、家賃収入から一部を手数料相当分として一部を不動産屋に支払う方法が一般的で、
随時生じる支出(修繕など)の費用は別途不動産屋から請求されて支払うことになります。
5 まとめ
空き家を活用する際、現状で最も確実なのは「賃貸物件」にすることです。
賃貸物件にすることができれば、清掃などの維持管理をする手間もなくなり、同時に家賃収入が得られるので、持ち主にとってはうれしいでしょう。
特に、将来的にその空き家へ自分たちが居住することを検討している場合、年数を区切って賃貸契約を締結すれば自分たちのライフプランにも影響がありません。
不動産屋との交渉は必要になりますが、相互の意向がうまくまとまれば、当面使うこともない空き家も立派な収益物件となるのですから、
空き家の管理で困っている人はぜひその活用を検討してみてはいかがでしょうか。