2020-03-03
高齢者によく起こる脱水症の原因とは?【介護者の対応策や点滴治療も解説】
この記事の目次
高齢になると脱水症になることが度々あります。
それは、加齢することで体内の水分量が減っていることや内臓の働きが低下してしまうために起こることなのですが、困ったことに当の本人は気づかないことが多いようです。
脱水症がひどくなると、血管や内臓、脳などに酸素や栄養が行き届かず思わぬ病気につながることがあります。
そうなる前に、適切な対象法を考えなくてはなりません。
そこで、この記事では高齢者の脱水症の原因と予防法、また、介護する方の対応策などをまとめてみました。
ぜひ、ご覧くださいね。
脱水症とは
人の身体の約60%は水分でできているということをご存じでしょうか。(高齢者は約50%)
その水分は体液と呼ばれ、身体の機能を保持するために重要な働きを担っているのです。
体液は血液、リンパ管、消化液などから構成されていて、体外に排出される水分量や塩分量と、体内に補給する水分量や塩分量が同じぐらいに保てることでバランスが良いとされています。
ところが、夏の暑い日の運動で大量の汗をかいたり、高熱や下痢などの体調不良で水分が失われると体内の水分量や塩分量が足りなくなってしまうことがあります。
そのようなときに起こるのが脱水症です。
高齢者の脱水症
皆さんは喉が渇くとお水やお茶を飲んだりと何か水分を取りますよね。
ところが、年をとると喉の渇きを感じにくくなってしまうようです。
これは、口渇中枢という部分で口が渇く器官の感受性が低下することによって起こる症状。
それによって、水分の補給が減少してしまうのです。
しかも、高齢者は失禁やおもらし、夜寝ている間のトイレを気にして水分を取るのを我慢してしまう人が多いのです。
また、そういったことから「水分を取ろう」という意欲が低下してしまい水分摂取が思うようにできなくなる高齢者もいるのが現状です。
身体の水分量が不足
上記のようなことから高齢者の身体は水分が不足してしまいます。
具体的にはどのようなことなのでしょう。
体内の水分量が不足する原因
・加齢により喉の渇きが感じにくい
・トイレが心配で水分が取れない
・嚥下障害(えんげしょうがい)や運動機能低下のため思うように水分が補給できない
・食事の全体量が減る
※嚥下障害:食べ物や飲み物などを飲み込むまでの機能が正常に行われなくなること
水分喪失量が増加
一般的に脱水症になる原因は、発熱や下痢、嘔吐(おうと)、糖尿病や降圧剤による頻尿などが挙げられます。
しかし、高齢の方は加齢による筋力低下のため基礎代謝が落ちていきます。
基礎代謝が落ちると、代謝できる水分量も減り筋肉や皮下組織で水分を備蓄できなくなり水分量が減る傾向にあります。
・下痢や嘔吐、発熱、熱中症がある
・腎臓の機能が低下
・水分を備蓄する筋肉量の低下
・利尿作用のある薬を服用
・ケガなどで出血や火傷で脱水
高齢者の脱水症を見逃さないためには
高齢になると自分で喉の渇きを感じにくくなることから、周りにいる家族や介護施設のスタッフなどが気づいてあげることが必要ですね。
そのためには、高齢者の表情を観察し、何かしらのサインを見逃さないようにすることが大切です。
脱水症のサイン〈顔や身体〉
・唇や口の中の乾燥
・皮膚や脇の下が渇いている
・体重が減っている
・手の甲をつまむと、すぐに戻らない
・爪を押すと、すぐに色が戻らない
・頻脈(ひんみゃく)や血圧の低下がある
・下痢や嘔吐がある
脱水症のサイン〈様子を判断〉
・食欲が落ちている
・トイレに行く回数が極端に少ない
・吐き気や頭痛があるようだ
・立ちくらみがあるようだ
・話しかけてもボーっとしている
・元気がない
・疲れているようだ
高齢者が水分を取りたがらない場合でも、唇や口の中が乾燥しているときは水分を少しずつこまめに取ってもらいましょう。
体重が減る、頻脈や血圧の低下が見られるとき、頭痛や吐き気を訴えている場合も脱水が進んでいると思われます。
脱水症が進んでしまうと、意識を失ったり痙攣を引き起してしまうこともあるので、細心の注意が必要です。
水分摂取不足によるリスク
高齢者が喉の渇きを訴えたら早めに水分を補給してもらうことが重要です。
脱水症のサインを見逃さず、リスクを最小限に食い止めるようにしましょう。
脱水症になってしまうと次のようなリスクを引き起こしてしまいます。
脳梗塞や心筋梗塞
脱水すると血液の濃度が増してドロドロになり血管が詰まりやすくなってしまいます。
脳梗塞や心筋梗塞は後遺症や命の危険性も高い疾患です。
筋力が低下
水分を備蓄する筋力量が低下してしまうと、転倒で骨折、寝たきりの危険性も。
熱中症になりやすくなる
高齢者は喉の渇きを感じにくくなることから水分を取らずに体温が上昇して発汗。体液が失われ脱水症になり、命の危険性があります。
アルコールは水分に含まれる?
大人が1日に取る水分量は約2,000mlが推奨されています。
これは何も、お水だけを1日2,000ml取るということではありません。
1日を通して、料理に含まれるみそ汁やお茶などでも構わないのです。
ですが、気をつけていただきたいのがアルコール類です。
よく男性に水分量の話をすると「俺はビールやサワーを飲んでいるから水分は取っているよ」なんて言う人がいます。
ビールやサワーなどのアルコール類は水分でも取っている水分量にはなりません。
本人は水分を取っているつもりですが、ビールやサワーなどのアルコールを飲んだ後には何が起こりますか?
そうです、トイレに何度も行きたくなりますよね。
特に、ビールは利尿作用が強く、1Lのビールを飲むと1.1Lの水が失われると言います。
つまり、ビールを飲めば飲むほど脱水になりやすいのです。
また、アルコールを分解する際にも水が必要になります。
アルコール類を飲んだら必ず水を飲んで水分補給をしましょう。
二日酔いにもなりにくいですよ!
高齢者の脱水症予防
高齢者が1日に必要な水分量は約1,500mlが目安です。
先ほどにもあったように、無理してお水だけで水分を取る必要はありません。
そして、いっぺんに取ろうとせず1日に何回かに分けて少しずつ飲むようにすることも大事です。
例えば、コップ1杯(約200ml)を朝起きたら飲む、朝食時・昼食時・夕食時、入浴後、就寝前、これでだいたい1,200mlの水分補給ができます。
あとの300mlはお味噌汁やお茶で取ることができるのではないでしょうか。
また、お味噌汁やお茶の昆布茶で塩分を取ることもできます。
夏の暑い時期は塩分の補給もできるので熱中症予防にもつながります。
塩分制限がある人は、お味噌汁の具を葉物やイモ類の野菜にすることでカリウムの成分が塩分の体内吸収を防いでくれます。
そうは言え、高齢者自身が自分で水分補給することが難しい介護施設などではスタッフが定期的に声がけすることが必要です。
できれば、500mlのペットボトルを数本用意しておくと飲んだ量が把握できますね。
※お茶やコーヒーはカフェインを含んでいるため飲み過ぎには注意しましょう。
ほうじ茶や玄米茶などカフェインが少ないものがおすすめです。
※ジュース類は砂糖が大量に含まれているのでおすすめできません。
高齢者の好きなもので水分補給
高齢者は自分で喉の渇きを感じにくいことや意欲も低下しているため自分から水分補給をすることは難しいでしょう。
そのような場合は、高齢者の好きな飲み物を用意すること、フルーツやゼリーなどでも水分は補給できます。
フルーツには水分を多く含むものがたくさんあります。
特に、夏のスイカや冬のミカンなども高齢者は好んで食べてくれるのでは?
また、高齢者が好むものに水ようかんやゼリーなどがあります。
水ようかんやゼリーは水分を凝固させて作られているので歯の悪い高齢者でも食べやすく喜んでいただけるのではないでしょうか。
要介護の方の不安
要介護の方にとってトイレの問題は切実です。
それは何も、失禁やおもらしの失敗を恐れるばかりではなく、トイレに行くまでが大変、ドアを開け閉めが大変、ズボンの上げ下ろしが大変という苦労があるようです。
健康な人には分からない苦労ですよね。
それが、日常生活にあるのです。
そうなると益々、水分を取りたくなくなってしまうのも仕方のないことかもしれません。
介護施設やご家庭で介護されている方は、このような高齢者の不安をできるだけ取り除いてあげる努力が必要になります。
例えば、「トイレに行きたいときは遠慮せずに声をかけてね」「トイレは一緒に行くから心配しないでね」などと、安心させてあげましょう。
水分補給ばかりに捉われず、高齢者の気持ちを優先して可能な限り不安を取り除いてあげることで安心して水分補給ができることにつながるかもしれません。
脱水症の改善には
高齢になると水分を取ることだけでも大変な不安があるようです。
周りの家族や介護者がどんなに注意していても脱水症になってしまったらどうしたら良いのでしょう。
軽程度だと思われる場合
脱水症を起こしているなと思ったら十分な水分補給とミネラル「電解質」の補給が必要です。
ミネラルは身体の機能調節に必要不可欠な成分。
この両方を効率的に摂取できるのが「経口補水液」です。
経口補水液は市販されていますが、家族の方や介護者が自分で作ることも可能です。
経口補水液の作り方
用意するもの
①水:500ml
②塩:1.5g
③砂糖:20g
作り方
①~③を混ぜるだけ
レモンを少量加えると飲みやすくなります。
(1Lの場合は材料を2倍にしてください。)
経口補水液を飲んでいただくのは、脱水症の症状が現れてから4時間以内が良いでしょう。
経口補水液を飲ませる量の目安は体重1㎏に対して30~50mlです。
※医師から糖分や塩分制限が指示されている場合は飲ませる前に相談しましょう。
また、経口補水液がなかったり作れない場合は普通の水で対応することもあると思いますが、水の摂取量は1日約2Lを目安にします。
中程度だと思われる場合
軽程度の場合と同様に経口補水液を飲ませます。
中程度の場合は、体重1㎏に対して100mlが目安です。
嘔吐がある場合は、1度嘔吐するごとに、嘔吐した量と同じぐらいの経口補水液を飲ませます。下痢がある場合は、1度排泄したら体重1㎏に対して10mlが目安です。
重程度だと思われる場合
意識を失っていたり痙攣などの症状が見られる場合は経口補水液などの口から摂取する水分では危険な場合があります。
命にかかわることなので緊急に医療機関の受診が必要です。
脱水症の治療
脱水症の症状が軽程度や中程度だと判断された場合は、「経口補水液」を飲ませることで症状は軽減できるでしょう。
しかし、普段より血圧が下がっている、意識がないなどという場合は病院で点滴を打ってもらう必要があります。
高齢者の点滴治療のリスク
点滴を打つことで水分と電解質、糖を血管に直接投与することができるので経口補水液よりも効果が早く現れ、症状がやわらぎ怠さがなくなるようです。
ですが、高齢者は心臓に負担がかかるためゆっくりの速度で長時間かけて点滴をする必要があります。
まとめ
高齢になると、身体機能が低下するためあらゆる不具合が生じてしまいます。
脱水症もその1つで、筋肉量が少なくなることから体内の水分を備蓄しておくことが難しくなるようです。備蓄するのが難しいのなら、まめに補給するようにしたいところですが、そこにはトイレの問題がありました。
水分が不足すると脱水症を起こしてしまい、ひどくなると命の危険性もあるようです。
そうなる前にこまめな水分補給や工夫で脱水症を防ぎましょう。
日ごろから少しでも脱水しているなと思われる高齢者の方には「経口補水液」を飲んでもらうことで重症化を防ぐことが可能です。
また、介護者は高齢者の様子を観察して脱水症のサインを見逃さないように気をつけることも大切なことですね。