2020-03-03

墓じまいの費用とは?|手続きの流れやよくある相談を解説

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墓じまいの費用とは?|手続きの流れやよくある相談を解説

この記事の目次

お盆や彼岸など、お墓参りの習慣が近づく季節になると、「墓じまい」と言う言葉が聞かれるようになってきます。

ここで言う「墓じまい」とは、遺骨を今のお墓から納骨堂や永代供養墓などの管理が不要になる新しい場所に移して、今のお墓は撤去して墓地の管理者に返還する行為のことを言います。

昨今、子どもたちが巣立ってしまい、自分たちが納骨されたとしても、そのお墓を管理する子孫がいないことから、親の世代が自主的に墓じまいを考えることも増えています。

では実際に、墓じまいとはどのように行えばいいのでしょうか。

1 墓じまいを考えるきっかけ

まず、墓じまいを考えるきっかけを考えてみると、やはり「自分たちの代で墓を面倒見てくれる人がいない」ことが一番多いです。

結婚した子どもたちが独立して、県外に出てマイホームを持ち、実家に帰ってくる見込みが立たなかったりすると「ああ、墓を面倒見てもらえない」と考えてしまうのです。

また、子どもたちが結婚せず独身のまま実家に暮らしていると、自分たちが亡くなっても子どもが葬儀や納骨はしてくれるかもしれないが、その子どもが亡くなってしまうと結局お墓の面倒を見てくれる人がいなくなる、と考えることになり、自分たちが元気なうちに墓じまいをしておこう、と言う考えに至るのです。

確かに、最近は「無縁墓」が全国各地の霊園で増加しています。私が仕事で知り合った、ある政令指定都市の担当者さんは無縁墓についてテレビの取材を受けていたのですが、その時に「お墓に対する考え方が変わってきている」とおっしゃっていました。

昔は見栄えのいい、先祖と一緒に代々入っていく「先祖墓」が主流でした。

ですが、時代が変わるにつれて墓にかけるお金の出し渋りや、見栄えだけにこだわった墓よりもみんなに負担をかけないように供養してもらえる海洋散骨など、新しい選択肢が増えていることも墓じまいの遠因ではないかと思われます。

 

2 墓じまいにかかる費用

墓じまいにかかる費用を考えてみると、現在の墓の撤去処分費、遺骨の移転にかかる手続きの費用、そして新しい納骨先の契約にかかる費用がそれぞれ必要になります。

それぞれの費用について、詳しく見ていきましょう。

 

○現在の墓の撤去処分費

主に、既存の墓を撤去して墓石を処分し、かつ使っていた墓所を更地に戻すための費用です。

一般的な石材店であれば、1平方メートルあたり10万円程度の費用を請求されます。ただし、墓石を撤去するときに人力でしか運び出せないような山間部であれば、その分人件費が多くかかるので思ったよりも高額になることもあります。

ここで一緒に請求されるのが、「招魂抜き」「閉眼供養」とも呼ばれる、今のお墓の撤去に伴う供養費用です。一般的には付き合いのある僧侶等を呼び、お墓の前で拝んでいただくのですが、この時のお布施が平均して3万円から5万程度かかるとされています。

また、新しいお墓に遺骨を入れる場合にも、同様に僧侶等に拝んでいただくため、これまた同様にお布施が必要になります。

もしここで、お寺との縁が切れてしまうような場合には、僧侶より「離檀料」を請求されることもあり得ます。離檀料は寺院が自分で勝手に根拠を作って請求してくるものですから、世間の相場は通用しません。一般的には数万円、場合によっては数十万円というところもあり、高額な離檀料を請求されたことでトラブルに発展するケースもあります。

 

○遺骨の移転にかかる手続きの費用

遺骨を移転するには、今のお墓がある自治体に「改葬許可申請」を行う必要があります。

改葬申請には、以下の書類を求められることになっています。

 

  • 今遺骨が埋葬されている墓地等の管理者の証明書
  • 新しく埋葬する移転先の墓地等の管理者の証明書
  • 今遺骨が埋葬されている墓地等の持ち主が自分でない場合は、その持ち主の承諾書
  • 新しく埋葬する移転先の墓地等の持ち主が自分でない場合は、その持ち主の承諾書
  • 移転する遺骨の氏名等のわかる書類

 

改葬申請には、新しい行き先をちゃんと確保しているのかを確認する意味合いがあります。

ですから、まずは新しい霊園等をさがし、契約して証明書をもらうところまで段取りをしなくてはなりません。

なお、ここで言う「管理者」は、霊園等の経営主体によって、次のようになります。

 

  • 公営墓地の場合:運営を所管している担当課の証明
  • 寺院墓地の場合:運営している寺院(宗教法人)の代表者の証明
  • 共同墓地の場合:運営している団体の責任者の証明
  • 個人墓地の場合:墓守をしている個人の証明

 

この中の「共同墓地」とは、町内会などの地域団体や、墓地使用者が集まって組合を作っているものを差します。

また「個人墓地」は、運営者がおらず、先祖代々一族で使い守ってきた墓地のことを言います。

 

○新しい納骨先の契約にかかる費用

最後に「新しい納骨先の契約にかかる費用」ですが、これにかかる費用が一番高額になるのではないでしょうか。

ここで、最近見られる納骨先の形式についてご紹介しましょう。

 

  • 一般的な墓所:四角の区画が用意されていて、そこに自身で墓石を建立するもの。
  • 樹木葬:霊園内に設けられたモニュメントである樹木のふもとに納骨してもらうもの。
  • 永代供養墓:霊園内に他人と一緒に納骨されるもの。
  • 納骨堂:自分の一族用に棚を用意してもらい、建物の中に保管させてもらうもの。
  • 海洋葬:別名「散骨」とも呼ばれ、海に遺骨をまいてもらうもの。

 

この中で一番費用が掛かるのは、やはり「一般的な墓所」です。1平方メートル当たりの価格が設定されていて、公営墓地であれば4平方メートルで40万程度、その他寺院が経営する場合では4平方メートルで60万円程度の費用が掛かることがあります。

これに加えて、定期的に「管理料」を支払う必要もあるため、購入後もずっと費用の負担が必要になるため、高額なイメージがあります。

一方、自分で墓石を建立しないタイプの「樹木葬」や、建物内の棚に遺骨を納める「納骨堂」などは、一般的な墓所よりは費用が安く済むのですが、それでも20万から30万円の費用が最初には掛かる場合が多いです。

これらの契約を済ませないと、新しく埋葬する移転先の墓地等の管理者の証明書がもらえないので、改葬許可申請を行うことができないのです。

余談ですが、「海洋葬」や「散骨」は、国の法律で認められている行為ではありませんが、禁止されている行為でもないグレーゾーンな供養の方法です。

そのため、それらを新しい行き先として自治体に申請すると、申請そのものを受理してもらえない場合もあります。ただし、禁止されているわけではないこともあり、「申請は不要ですが環境に配慮して行ってください」などと指導を受ける程度のようです。

3 自宅に遺骨を保管することは可能か

新しく作ったお墓に納骨してあげたいけど、費用がなかったり、希望する霊園に空きがない場合には、一時的に自宅に遺骨を保管することも選択肢の1つになります。

法律上、一時的に保管するのであれば、違反にはならないとされています。

これまでは法律で「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない。」と定められていることもあり、刑法190条の遺骨遺棄罪にあたるとして禁じられていました、

ですが、時代の変容とともに法務省が出した指針により「社会的習俗として宗教的感情などを保護する目的だから、葬送のための祭祀で、節度をもって行われる限り問題はない」という見解がだされ、散骨イコール違反行為とはみなされないことになりました。

自宅に遺骨を保管することも同様で、周辺の住民や公共衛生上悪影響を与えない場合は、一時的に保管しておくことは違反行為とはみなされないことになったのです。

ただし、自宅の庭へ周囲にわからないように遺骨を埋めるなどの行為は、法律で「墓地以外の区域にこれを行ってはならない」とある以上、違法になります。

自宅の庭に墓地を建立することを許可してもらえばいいのでは?と言う考え方もありますが、これは「個人墓地」とも呼ばれており、全国見回しても許認可制度を設けている自治体は少なく、むしろもともと禁止されている自治体が多いのです。

4 墓じまいは子どもたちと前もって相談を

墓じまいの方法についてご紹介しましたが、墓じまいは親の世代だけで決めてはトラブルになることもあります。

親の世代は「子どもたちには墓の管理で手間をかけさせたくない」と思っていても、子どもたちには別の考え方があるかもしれません。

実際、私が関わった墓じまいのお仕事があったのですが、子どもさんに親御さんのご意向をお伝えすると、「自分たちもやがて実家へ帰り、その墓を自分たちも入るつもりだったのに」と驚かれ、親御さんと話をした結果、寺院へ遺骨を預かってもらう「永代供養」ではなく、山の上から駐車場完備でお参りのしやすい同じ市内の墓所を購入し、移転することになったことがあります。

このように、親世代と子ども世代の間で考えが違っていることもあるので、やはりお互いの世代同士で話し合いをしてほしいと思うのです。

あと、子どもがいなかったり、子どもが独身でそのあとの世代にお墓の管理を託すことができない事情がある場合は、司法書士や行政書士へ死後事務委任契約を依頼していただくことをお勧めします。

死後事務委任契約とは、本人が亡くなった時に遺族や親族が行う各種手続き、それに遺産や遺品の整理などを、生前に結んでおいた契約に基づいて第三者に代行してもらう方法のことです。

信頼のおける友人などを指定することもできますが、一般的には司法書士や行政書士などに依頼することが多いです。行政書士事務所でお受けする場合は、どれだけのことをご依頼になるかによりますが、5万円から10万円程度の間で契約させていただくことが多いです。

5 まとめ

墓じまいは、どこの家庭でも直面する課題の1つだと私は思います。

特に最近は、お墓を建立するのではなく、管理面でも手間がかからず、費用面でもできる限り安価に済ませることのできる埋葬方法が増えているのも事実です。

そんな時代だからこそ、それぞれの世代でしっかり話し合い、埋葬される人が本当に望んでいる方法で供養をしてあげて欲しい、と言うのが私の個人的な気持ちです。

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