2020-03-03
終活アドバイザーが高齢者から受ける相談とは?|よくある質問を解説
この記事の目次
終活アドバイザーなど、終活に関する相談を受け付けることを目的にした資格が年々増加しています。
確かに、いざ終活を始めてみようと思っても、高齢者世代の多くは保険や相続の問題、葬儀の準備などを前にして戸惑います。
高齢者の声をお聞きしてみると、「終活にあたって何から始めればいいかわからない」「何をどう聞いていいのかがわからない」などと、それぞれに事情がおありのようです。
そこで、これから終活を始めるみなさんのために、高齢者世代がどのようなご相談をされるのか、その内容などについてご紹介したいと思います。
相談事例1 何から始めていいかわからない
終活を行うにあたって、何から始めていいかわからないと困惑する高齢者が結構多いようです。
そういうタイプの人に限って、自発的に終活をしようとしているわけではありません。テレビや雑誌などで終活特集があり、それを見たとたんに「自分たちも終活をしなくては!」と焦って相談に来られる場合が多いのです。
こういうタイプの相談については、「そもそも終活とは」というところをまずご説明して、本当に急いで終活をすればいいのか、急いでいるとしてもまず行うべきことは何かを相談に対応する中で浮かび上がらせていくことになります。
よく話を聞いてみると、子どもさんなどと相談を全くしていないこと、それを指摘すると「子どもたちは当てにならない」とか「子どもに負担をかけたくない」という答えがすぐに帰ってきます。
終活は、高齢者自身が意向を考えるべきことではありますが、実際に行動するのは高齢者世代でなくても、子どもたちの世代が行動したって問題はないのです。
できることなら、子どもさんと一度相談してもらいたいというのが、こちらの本音です。
相談事例2 エンディングノート作成のアドバイス
最近では大手の書店などで「エンディングノート」が販売されるようになっています。エンディングノートは、財産の状態や自分の死を連絡して欲しい人の一覧など、死後に遺族がそれを見ることでさまざまな対応をスムーズに行えるように残しておく「覚え書き」の一面が大きいです。
いざエンディングノートを購入してみたものの、さまざまな内容があり、すぐに書くことができなくて頓挫してしまった高齢者の方が相談に来られることもあります。
「終活はめんどくさいですね」と言われるものの、エンディングノートのすべてを満たそうとすれば大変かもしれませんが、よくよく話を聞いてみると、エンディングノートを作成しなくても問題なかったりするものです。
もちろん、エンディングノートの作成については、終活アドバイザーとして丁寧に対応させていただいています。
相談事例3 特定の子どもたちに相続をしたい
子どもが3人いるけれど、そのうち自分たちを困らせるばかりであった長男には遺産を一銭たりとも渡したくない、どうすればそれが可能なのかと相談にやってくる高齢者もいらっしゃいます。
いわゆる「相続」なので、法的に有効な方法で作成されている遺言状があれば、その内容が優先されることをお伝えすると、それだけで満足してお帰りになられるケースも多いです。
でも、相続にはプラスの相続(預貯金や株式)もあれば、マイナスの相続(借金)もあります。
相続にあたっては、プラスマイナスを確認して相続に係る収支はどうなっているのかを考えてみないと、受け取る側が素直に受け取れない場合も出てきます。
相続しても残るのは借金だけ、という状態では子どもたちも相続放棄する可能性もありますから、「借金はないですよね?」と遠回しに聞きつつ、相続可能な財産がどれくらいあるのかを確認することを勧めています。
あわせて、子どもたちの間で争いが起きないようにすることもアドバイスしています。財産を築き上げたのは、自分たち高齢者の世代だ、自分たちが相続のことを決めて何が悪いと怒り心頭になる方もおられます。
ですが、死後子どもたちが骨肉の争いに明け暮れるのは決して気持ちのいいことではありません。それを避けるためにもと、半ばお願いするようにアドバイス差し上げることもしばしばです。
相談事例4 墓じまいについて
自分たちが埋葬される墓について、やがて面倒を見てもらえなくなることがわかっていたり、遠方に子どもたちが移住してしまって故郷に戻ってこないことで、墓が荒れ放題になってしまうことを危惧する相談も多いです。
どうせ面倒を見てもらえないならば、自分たちの代で「墓じまい」をして、菩提寺に遺骨を預かってもらい、自分たちが亡くなったときも同様に菩提寺に預けて欲しいという意向を持っている人も多いようです。
この手の相談の場合、ポイントは「埋葬の方法」や「埋葬する場所」、「誰が埋葬するのか」になってきます。
実際に相談があった場合、自分たちだけの希望であることはわかってくるのですが、子どもたちに相談することをこちらとしてはおすすめしています。
子どもたちは子どもたちで考えがあるようで、自分たちの今の住居に近い場所で供養地を探す人もいますから、親の気持ちと子どもたちの気持ちをすり合わせることは大事だと思います。
相談事例5 葬儀について
親の世代と子どもたちの世代とで考え方が分かれるのは「葬儀」も一緒です。
最近は「家族葬」「直葬」などさまざまなスタイルの葬儀が登場していますが、その大半は費用を極力抑えるためであったり、本当に近親者に限って葬儀を終えたいという意向が働いています。
親の世代は、できる限り多くの人に見送ってもらいたい気持ちがある一方、子どもたちの世代は費用を極力抑えて質素に葬儀を行いたい、という意向がそれぞれにあるようです。
また、親の世代がいくら希望を出しても、葬儀の段取りから実施するのは子どもたちの世代ですから、果たして自分たちの意向がかなえられるのかという不安が、親の世代を終活に駆り立てている一面もあります。
対策としては、エンディングノートに意向を書き残しておくこと、希望する葬儀のための費用を生前に用意しておく、葬儀場などを親子で一緒に見学してお互いに納得できる葬儀を段取りすること、などがあります。
相談事例6 不動産などの処分について
自分たちが暮らしている住居や、稲作を続けている農地など、不動産の処分について相談を受けるケースも増えてきました。
特に住居は、自分たちが亡くなったり、施設に入所してしまうと住む人がいなくなり、空き家になることでその維持管理ができなくなることを不安視している高齢者が多いです。
昨今では「特定空き家」と呼ばれる、倒壊の危険性が生じるような危険な空き家も問題になっているので、尚のこと気になるのでしょう。
不動産の処分については、やはり相続財産に影響を及ぼすことなので、終活アドバイザーとして同行するということはお答えできませんので、司法書士や行政書士など専門家への相談を推奨すること、子どもたちの世代としっかり相談すること、この2つをお答えしています。
あと、意外と多いのが「自動車」の処分です。高齢者になって免許を返納する人も増えてきましたが、地域によっては自動車に乗らないと買い物もできないようなところもありますから、結果的に自動車を手放すまでかなり時間を要することもあります。
ですが、自動車に乗らないときっぱり決めたとたん、所有している自動車の処分について終活の一環で相談してくる方も多くなっています。中古車買い取りとして査定をしてもらっては?とか子どもさんやお孫さんに譲っては?程度のお答えしかできませんが、それでも満足していただくケースが多いです。
相談事例7 手続きの代行について
終活の結果、実際に公的機関に手続きに出向く必要が生じるようなこともありますが、私たち終活アドバイザーが代わりに手続きを行うことはできないのです。
それでも「親切だからあんたにお願いしたい」とおっしゃる人もいれば、代行する資格を持つ司法書士や行政書士に依頼することをアドバイスすると「手数料を取られるからいやだ」という人もいます。
終活アドバイザーも、場合によっては相談料をいただくこともあるのかもしれませんが、なんだか「ただ」だから相談している、と言われてしまうとなんだか悲しい気持ちになるときもあります。
でも、公的な手続きは私たちの立場では代行できないので、そのあたりはご理解いただきたいと常日頃から思っている次第です。
相談事例8 墓に持っていきたい隠し事について
よく誰に言えない秘密を「お墓にまで持っていく」と言って隠し通す人がいますが、終活に至って「そういうわけにはいかないので」と、秘密をどのように打ち明けようかと考えて相談される人がいます。
実際、私もその手の相談を受けたのですが、妻に内緒で付き合っている女性への財産贈与とか、妻が知らないけど前付き合っていた子どもを認知しているなど、相続にも影響を及ぼすような相談をなされる人もいてびっくりしました。
さすがにこれらの相談内容を「終活」というのもどうかと思いますので、相談を受けたときには弁護士さんや司法書士さんなどを紹介させてもらうことにしています。あまりにも重い内容の相談なので、お受けした後には疲れてしまいますね。
まとめ
終活アドバイザーの主な役割は、終活に悩む人にとっての相談相手になることだと思います。
終活にあたって必要なことは多岐にわたりますから、1人ではスムーズに進めることができませんし、それをサポートするために就活アドバイザーなど資格を有する人の知識が役に立つのだと思います。
また、終活アドバイザーの役割のひとつが、行政書士や司法書士など専門家のご紹介でもあります。
終活においてこの手続きの部分を、この専門家にお願いする、いわば段取りの道筋を立てることが、終活アドバイザーに求められている大切な役割なのかもしれません。
もちろん、相談にあたるためには「やさしさ」「丁寧さ」など、相談をしやすい環境づくりに努めることは忘れてはなりません。