2020-03-03

両親のいない空き家にかかる町内会費は払うべき?|行政書士の目線で解説

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両親のいない空き家にかかる町内会費は払うべき?|行政書士の目線で解説

この記事の目次

両親が住んでいた空き家を管理することになった時、気になるのは「町内会費」です。

安易に「住んでいないので払う必要」はないと考えて、放置しておいたらトラブルになった事例もあるようです。

義務ではないものの、近隣の住民からの声も気になるので、本心では払いたくないのにしぶしぶと払い続ける方も少なくありません。

実際には、両親のいなくなった空き家分の町内会費は払うべきなのでしょうか。

1 町内会費は支払う義務があるか?

まず、町内会はそもそもどのような位置づけなのかを再確認してみましょう。

町内会は、その地域の共通するインフラなどを共同で運営するためや、広報紙の配布やごみステーションの運営管理などを行うために設けられている組織です。

法律で設置が義務付けられているわけではないので、考え方としては「地域住民が自らのルールで運営している任意団体」と考えてよいでしょう。

そのため、法律的に必ず入らなくてはならないわけではないため、ここ数年は町内会に加入しない住民も増えています。一方、地方になればなるほど「他人の目」を気にして、最低限の付き合いをすると割り切って町内会に加入する人も多いのが現実です。

町内会に加入してしまえば、町内会の規約で町内会費をどのように位置付けているかを確認しておく必要があります。

例えば、加入できる人を「居住している人」と明記してあれば、空き家の場合は誰も住んでいないわけですから、加入したくても遠方にいる子どもたちは加入することすらできないわけです。

でも、町内会の規約で「家の持ち主」が加入できるとなっていれば、遠方に住んでいる人でも望めば加入することができるわけです。

町内会によっては、「空き家を管理しているもの」に対して町内会費を請求する事例もあるようで、その理由を「ごみステーションや団地内道路などを共有しているのだから、それらの維持経費をある程度負担してもらうため」としていることが多いです。

法律的にしっかりとした根拠がない以上、支払いに対してトラブルが生じることもしばしばあるのは事実です。

2 町内会費をめぐるトラブルの実例

町内会については、脱会を希望した場合にさまざまないやがらせを受けることがあり、全国的にも訴訟に発展するケースも増えています。

具体的には、生活していくために欠かせないサービスを提供してもらえないなど、実害を被るような「いやがらせ」とも受け取れる事例が多いようです。

例を挙げると、次のようないやがらせと思われる行為があります。

 

  • ごみステーションの使用を禁じられた
  • 家の近くの街灯を外された
  • 広報紙を配布してもらえない
  • 町内の行事等を教えてもらえない(回覧板を回してもらえない)
  • 欠席した会議で無理やり役員を押し付けられた
  • 引っ越してきた直後に中途入会費として法外な負担金を請求された
  • 引っ越しの際に前納した町内会費の一部を返してもらえない
  • 退会を申し出ても退会させてもらえない

 

特に、退会を認めてもらえないトラブルや、法外な負担金の請求を巡っては、裁判になった事例もあります。

そもそも町内会は、加入が義務ではありませんから、強制的に加入させようとすることは民法上の不法行為に該当します。もちろん、退会することを根拠なく拒もうとすることも違法です。

町内会によっては、入会の時に本人の同意を証明する書類の徴収を怠っていながら、退会をめぐって訴訟になると「口頭でも契約は成立する」と逆切れすることもあるようです。

「任意団体である以上、入退会の意思は書面をもって本人から徴収するべきなのに」とは、私の知り合いの弁護士の愚痴です。

この弁護士、いつも町内会側の弁護士として訴訟に臨むことが多いのですが、あまりにもずさんな運営に開いた口が塞がらないこともあるのだとか。

開いた口が塞がらないと言えば、法外な負担金もトラブルのもとになるのだとか。

実際にあった話だそうですが、団地の町内会の世話役であるX氏が「20年前に下水道工事を行った時の工事分担金を払え」と引っ越してきたばかりのAさんに請求してきたのだそうです。

当時から住んでいる人は、20万円を一括で払っている、そうして完成した下水道をあなたも利用するのだから分担金を払え、と言うのが相手の言い分でした。

中古住宅を購入して引っ越してきたこともあり、Aさんは購入時の説明義務不足だと仲介業者にクレームを入れつつ、工事費の内訳について資料をもらうようX氏に要望を出しました。

するとAさん、周辺で「あの人はクレーマーだ」とあらぬ噂を立てられる有様、おまけに工事費の内訳は全く提示されないままとなり、ついに訴訟に発展することに。

訴訟に発展したとたん、X氏のトーンが急にダウン。なんとX氏、根拠もないままにAさんに費用を請求し、自分の懐に入れようとしていたことが明るみに。

おまけに、その下水道工事は公共事業として行われたもので、当時の住民も20万円を納める必要すらなかったのです。

その当時から会計役をしていたのが、このX氏であったとのことで、X氏は詐欺未遂罪で警察に逮捕されてしまったのです。

このように、町内会は任意団体である以上、特定の人間が長期間にわたり権力を維持することにもなり、団体の運営状況が不透明になってしまうことで、犯罪の温床になってしまうこともあり得るのです。

もちろん、役員改選など健全に組織が運営され、その活動内容も明確に開示されているような町内会は信用してしかるべきです。

少しでも町内会に対して不明な点があれば、まず資料の開示を求めたり、不明な点を聞いてみることです。その中で「空き家の所有者」として、町内会に関わる必要があるのかなどを具体的にすり合わせておくのもよいでしょう。

3 実際に町内会費を請求された場合の対応

まずは「何を根拠に町内会費を請求されているのか」を確認しましょう。

町内会費と言っても、年会費もあれば、コミュニティハウスなどの工事を行うためにみんなで費用を出し合う負担金の請求もあります。

どんな請求であっても、なぜその金額になっているのか「根拠」を確認することはだれしも持っている権利です。また、支払った後でもそのお金がどのように使われたのか、決算報告書の配布を求める権利もあるのです。

結論を先に言えば、請求の根拠や決算書の内容を見て納得できるのであれば、支払いに応じても問題はありません。

そのような要望を出すと、集金に来た人間は「町内会長に聞いてください」と言われるだけの場合もあります。実際に必要な事業を行うのであれば、根拠を提示できないのはおかしいです。

そこで引き下がることなく「では後日、しかるべき方から回答をお願いします」とさらに要求しておいてもいいぐらいです。

特に、空き家の場合は誰も住んでいないわけで、会費を払うことでメリットがあるわけではないのです。それに、町内会に無理に入っても行事に協力できないのですから、それらの点を先に伝えておくと、無理に加入を勧められることはないはずです。

4 空き家の管理上最低限の付き合いを 

昔から日本には「村八分」と言う言葉があります。これは、町内会に加入しない人間が無視をされたり嫌がらせをされることを意味している言葉で、日本では古来より地域住民の結びつきは大事だとされてきた証しでもあります。

町内会費を支払うことで、地域の住民と一定の関係性を維持できるならば、ふだんの空き家管理において一定の理解を得られるかもしれません。

空き家の管理上、雑草の除草や樹木の伐採など、近隣の住民に迷惑をかけないだけの定期的な作業は必要ですが、

台風や大雨の直後などに予期せぬトラブルがあった場合でも、地域の住民と一定の関係性があれば、「お互い様」となって問題が大きくなることは避けられるかもしれません。

つまり、日ごろの人間関係を空き家管理上の保険と考えておくならば、町内会の加入も含めて、地域の住民と何らかの関係を確保しておくことは必要ではないかと思います。

もちろん、町内会に入ることだけが関係性の確保ではありません。いわゆる「おとなりさん」と関係性を確保していれば事足りる場合、町内会に入る必要はありません。

また、警備会社などが提供してくれる「ホームセキュリティーサービス」などを活用すれば、定期的な空き家の管理や緊急時の見回りを行ってくれるので、さらに安心感を得ることができるでしょう。

5 町内会が担っている地域のインフラなども確認しておこう

町内会は、地域の住民が共用で使用するインフラを維持運営するための組織でもあります。

空き家の管理上、それらのインフラを使用することがあるのであれば、町内会への加入も含めて、何らかの関係性を持っておく方がいいかもしれません。

ちなみに、町内会が維持運営している地域インフラには、次のようなものがあります。

 

  • ごみステーション運営
  • 水路管理(排水溝や用水路、水門の開閉など)
  • 伝統行事(=夏祭りや秋祭りなど)
  • 防犯(=通学路の見回りなど)
  • 情報提供(=回覧板)
  • ひとり暮らし老人の支援活動
  • 防火用水や消防用消火栓の管理
  • 神社や農道など地区内の公共財産の管理

 

これらのインフラのうち、空き家の管理上お世話になるインフラがあるのであれば、町内会との関係性を持っておくことも検討してよいでしょう。

町内会費を「サービスを利用しないから払う必要はない」とドライに考えるのは早計です。

空き家の管理上、その地域に実情を理解してくれる人を増やすことも考えた方が良いでしょう。

6 まとめ

今の町内会を運営している役員の世代は60代から70代の世代が多いです。

いわゆる「個人主義」と言うよりは、「みんなが義務を負うべきだ」と言う、護衛船団方式の考え方で生きてきた人ばかりであることは留意する必要があるでしょう。

それを踏まえて考えると、地元住民との円滑な関係性を保ち、「お互い様ですね」と言えるだけの関係を維持するためには、町内会費と言えども、払えるものなら払っておいた方が、友好な関係を維持できると考えてもよいでしょう。

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