2020-04-04
終活アドバイザーがおすすめの葬儀スタイルとは?|行政書士の目線で解説
この記事の目次
新型コロナウイルスの感染拡大により、故人の顔を見てお別れも葬儀もできない現実が多くの人々に知られつつあります。
そんなさなかではありますが、葬儀のスタイルは年々多種多様化してきており、新型コロナウイルスにより亡くなった人であっても「骨葬」と呼ばれる、火葬後の遺骨を祀って葬儀を行う新たなスタイルの登場をもたらしました。
このように、時代の流れと宗教的な考え方の変化により、さまざまな変化を遂げてきた葬儀。今回は終活アドバイザーがおすすめしたい葬儀スタイルについてご紹介しましょう。
1 葬儀スタイルはどのように変わってきたのか
太平洋戦争中の葬儀は、戦争で亡くなった兵士のために行われることもあり、村総出で行われるケースが多くありました。
国のために亡くなった人は偉人であり英雄であるという考え方もあり、参列者は村の住民が大半参列することも当たり前で、お供え(香典)もかなりの金額が寄せられて、遺族が生活に困らないように配慮される時代でもあったのです。
一方、戦後になって死ぬことの考え方が徐々に変わり、地域の偉人と言う扱いは鳴りを潜めてきたものの、一族で故人を供養するという考え方はまだまだ存在していました。村中の人々が集まるようなことは亡くなりましたが、地元に暮らす一族や親族が一堂に会して葬儀を行うことは戦後昭和の葬儀の一般的なスタイルともいえました。
時代は平成になると、次第に葬儀の在り方が変わってきます。かつては親族や一族の他に地元の住民や会社の関係者などが参列することも当たり前であったのが、濃い身内や家族だけで静かにお別れをする「家族葬」が当たり前になってきました。
特に、平成10年代以降は葬儀をする場所も葬儀会社の式場を使うことが多くなり、自宅に祭壇を組んで葬儀をすることはほぼなくなりました。黒白の花輪を供える風習も無くなったことから、いわゆる「葬儀屋」と呼ばれる形態の企業が衰退し、自社の建物でさまざまな人数の葬儀に対応できる「葬儀会社」が主流になってきたのです。
そして時代は令和となり、葬儀の主流は家族葬となりました。さらに時代は進み、少しでも葬儀にかける費用を安価にしようと、葬儀を行わず病院から直接火葬場に遺体を運んで火葬する「直葬」と呼ばれる葬儀の在り方も増えてきました。
一方で、葬儀と言うよりは故人を偲んだパーティーがメインとなっている「お別れの会」と呼ばれるイベントを開催する一般人も増えてきました。この形式は芸能人がよく行う形式でしたが、令和になってあまり湿っぽい葬儀は嫌だと生前故人が希望していたりすることもあって、会食形式で宗教色を薄めた供養の在り方として注目されています。
このように、時代の変遷とともに様々な葬儀の在り方が生まれては消えてきたわけですが、これからも時代の流れとともに葬儀も新たな変化が生まれることは必須でしょう。
2 最近主流の葬儀スタイルとは
それでは、令和の時代になって行われている葬儀のスタイルについて、その特徴などをご紹介しましょう。
ちなみに、ここで紹介するいずれの方法も、どれが正しいとか正しくないとかはありません。故人の意向を尊重し、遺族が悲しみから立ち直るきっかけになるならば、どんな方法でも問題はないと考えられているからです。
○家族葬
通夜から葬儀、火葬から収骨まですべてを家族だけで行うものです。一般的には宗教者が葬儀や火葬時に立ち会って読経などを行うこともありますが、宗教者を一切関与しないスタイルで行われる家族葬もあります。
家族葬のため、参列者もいないことからお供えがないことが基本です。そのため、葬儀費用はすべて遺族が負担することになります。
○直葬
通夜も告別式も行わず、遺体を火葬場に直接移動して火葬し、その後遺骨の引き取りのみを行う葬儀スタイルが「直葬」です。
宗教者も関与せず、葬儀を行うこともないため、かかる費用は火葬にかかる費用と火葬場の使用料程度に抑えることができるリーズナブルな葬儀です。
直葬を行う場合、葬儀会社が用意しているリーズナブルな直葬プランを利用する場合と、葬儀会社を介することなく全部遺族で行ってしまう場合の2パターンがあります。
全部遺族で葬儀を行ってしまう場合、問題となるのは棺の確保と遺体の移動です。棺はホームセンターで売っているような代物ではありませんが、自分で材料を購入してきて作れなくもないような気がします。
一方、遺体の移動については自家用車で移動することも容易に思えます。ですが、軽トラックに無造作に置かれた棺を見て市中の人は驚くこと必至でしょうから、あらぬ誤解を招かないためにもあまりお勧めできることではありません。
火葬場によっては、市民が直接予約することを禁じている場所もあります。火葬場としては低調に仮想をして、遺骨を拾っていただけるように残すのが仕事ですから、素人の作った棺で来られても遺骨を残せる保証ができないからです。
○散骨
葬儀から火葬までのスタイルは「直葬」や「家族葬」になっているものの、その後に粉末化した遺骨を海上や山林に撒くスタイルの葬儀です。
このスタイルの特徴は、遺骨を納骨してお墓で供養することを避けることで、お墓の購入費用や維持管理費用を抑制することができることです。また、自分の代以降お墓を管理する人がいなくなることがわかっている場合、お墓を無理に建てて無縁墓にしてしまうよりはと、散骨を行って後の世代に負担をかけないようにする場合もあるのです。
散骨は、葬儀会社に依頼して葬儀サービスのオプションとして利用することもできます。場合によっては、葬儀を行ってから間を開けることなく海に散骨する遺族も多くなっています。
散骨の場合、その場所に散骨する場所が適正かどうかは判断しなくてはなりません。一部の自治体では散骨場所を制限する条例を設けている場合もあるので、請け負う業者に合法性の確認をするべきでしょう。
ちなみに、散骨そのものの行為は国の法律で禁止されているわけでもなく、かといって容認されているわけでもない「グレーゾーン」の行為です。現実的には、散骨をすることで周辺の環境を悪化させることや、住民感情を悪化させることが無いよう、節度を持って行われれば違法ではない、と言うのが厚生労働省の見解となっています。
○宇宙葬
火葬までの流れは一般的な家族葬であるものの、遺骨をロケットで宇宙空間に打ち上げて供養する「宇宙葬」と呼ばれる新しいスタイルの葬儀です。
これも前述した「散骨」と同様で、最終的な埋葬地が宇宙と言うだけのことです。宇宙の場合は生活環境や周辺住民の感情などは一切存在しないので、打ち上げることで「故人は星になった」と美しいイメージで供養することも可能です。
ただし、かかる費用はかなりのものです。友人ロケットを飛ばすほど高額ではありませんが、それでも無人のロケットに積み込んで供養する場合、最低でも30万円ほどかかるようです。
最高級の宇宙葬になると、ロケットで打ち上げて宇宙で燃え尽きさせるのではなく、ほぼ永遠に地球を周回する人工衛星に遺骨を乗せることで「故人はほぼ一生地球を周回して遺族を見守っている」と言う「人工衛星葬」と言うプランを提供している企業もあります。この場合、金額は最低でも100万円からなので、庶民にはなかなか選びにくい選択肢ともいえます。
3 葬儀への希望は「エンディングノート」などで残せる
終活アドバイザーとして終活に関わっていると、やはり葬儀や納骨場所への希望はかなりきめ細かく残しておきたいというお客さまも多くなっています。
家族葬の場合であっても、家族のように付き合いのあった友人を招いて欲しいなど、葬儀の方法はもちろんですが参列して欲しい人を指定することもエンディングノートであれば可能です。
また、自身が亡くなったことを伝えて欲しい場合、エンディングノートに友人一覧や友人に送付する手紙の原本をいっしょに残しておき、遺族に託しておくことができます。
ただし、エンディングノートには法律的な根拠はありません。あくまで自身が亡くなった後の希望であり、その希望を遺族が実際にかなえてくれるかどうかは未知数です。
ならば、法律的に有効な手段である「遺言状」に記載すれば、自身の思う葬儀などが行ってくれるのかと言えば、そうではありません。遺言状は基本的に財産の相続などを定めておく意図で作られるものだからです。
確かに「望みの葬儀を行ったものに遺産のすべてを譲る」とでも書けば、みんなが故人の意向を尊重して葬儀を行うかもしれませんが、この場合は相続財産管理人を家族や親族とは別に就任させておき、っ遺言状に定める条件を履行することを確認させる必要があります。
相続財産管理人を、生前のうちに弁護士などに就任してもらっておけば希望する葬儀も実現できそうですが、履行しなかったからと言って法定相続分の財産は分与されることから、故人の思うようにはいかない場合もあるでしょう。
これは理想かもしれませんが、エンディングノートを残される遺族と一緒に作ることで、自分が望む葬儀について理解してもらい、スムーズにそれを実現してもらうことを考えた方がいいのかもしれません。
4 まとめ
昨今、葬儀会社のサービスは葬儀だけではなく「終活」全般にまで広がる傾向があります。実際、葬儀会社に終活アドバイザーがいることも当たり前になりつつあります。
やがて訪れる自分の死を前に、マイペースに準備をしておきたい高齢者が多くなっていることは事実です。そのため葬儀会社では事前に提供するサービスとして、
相続に関わる資産運用や介護などの情報提供、エンディングノートや遺言等の作成支援も率先して行うようになっているのです。
これからは少子化社会になり、高齢者となった自分を支えてくれる子どもたちの世代もどんどん数が減ってきますから、自分の去り際は自分で段取りするのが当たり前の時代になるのかもしれません。