2020-04-04
【終活アドバイザーが解説】最新のお墓事情とは?|ネット墓地もご紹介
この記事の目次
お墓は祭祀財産と呼ばれる財産にあたり、民法上の相続とは別に切り離されて考えられます。
そもそも祭祀財産とは、先祖を供養するための財産のことで、お墓の他に仏壇や仏具、家系図などがこれに当てはまります。
お墓の在り方として、これまでは一度建てたお墓は先祖代々受け継ぎ祀っていくのが一般的とされてきましたが、ここ数年お墓に対する考え方が多様化してきており、「墓じまい」などと言う考え方も出てきました。
令和の時代になって、現代のお墓事情はどうなっているのでしょうか。
1 お墓の形態が多様化している
人が亡くなれば火葬し、先祖代々のお墓に遺骨を納めるというのがこれまでの考え方でしたが、そこには「先祖墓」と言う存在があり、どの家も当たり前のように先祖墓があるという前提がありました。
しかし近年、お墓の形態が多様化してきており、先祖墓ではなく個人墓や夫婦墓と言う存在も当たり前になり、さらには墓石の形や墓石を持つか持たないかの選択も当たり前のようになりつつあります。
中には、墓石の形態すらこだわらず、自然葬や手元供養などの供養方法も登場しています。
それぞれの供養方法について、その実情を確認してみましょう。
○洋式など多彩な形状のお墓
一般的なお墓のイメージは、縦長で「〇〇家之墓」などと刻まれている和型のお墓だと思います。墓地に行って一番よく見かけるのもこのタイプが多いはずです。
それに対して、最近では横幅が広くて低めの「洋型」の墓石も多くみられるようになりました。和型のお墓よりも明るい色の石が多く、芝生の霊園などで多く見られるようになりました。
そして、お墓に刻む文字も「○○家」や「南無阿弥陀仏」ではなく、自由な彫刻がされる傾向にあり、亡くなった人が生前好きだった言葉や、「愛」「絆」など漢字一文字を刻むことも多くなっています。
洋型のお墓を一言で言えば、従来通りの固いイメージではなく、自由なスタイルで建てることができるお墓と言えばわかりやすいかもしれません。
一方、洋型墓石よりもデザイン性を追求した墓石もあります。例えば、サッカーが好きだった人ならサッカーボールの形、音楽が好きだった人ならピアノの形、と言った感じで形にこだわらないお墓も増えているのです。
○合祀墓
合祀墓は、大きなお墓に不特定多数の人と一緒に入ることになるお墓の形式です。骨壺や麻袋に遺骨を入れ、それを大きな収納スペースに一緒に入れることになります。形式によっては入れると二度と取り出せない場合もあります。
合祀墓は自治体の墓地の一角や寺院の一角に設けられることが多いです。特に最近は「墓じまい」が当たり前になり、既存のお墓に入っている遺骨を取り出し、合祀墓に再度埋葬することが多くなっています。
合祀墓のいいところは、墓石を購入するだけの費用が不要で、永代使用料だけを払うことだけなので金銭的負担が軽減されることです。
一般的な墓石を立てると、和型の先祖墓の場合は加工費や設置費用も含めて100万円程度するのですが、合祀墓の永代使用料は20万円~50万円程度であることが多く、最も安価な公営霊園の合祀墓になると1体につき1万円などと言う破格値の設定もあります。
ただし、公営霊園では供養祭などを一切行わないので、定期的な墓参などは自分で行わねばなりません。いっぽう、寺院の合祀墓では永代使用料が高い分、お盆や彼岸の供養祭などを行ってくれるので仏様を粗末にすることにはなりません。
○納骨堂
納骨堂は、建物の中に自分の家専用の納骨スペースを設けてくれる建物型の供養施設で、自治体や寺院が設置していることが多いです。
専用の納骨スペースが用意されていることで、先祖代々使用することが可能ですが、納骨堂のルールにより納骨から50年や33年経過すれば別の場所に納骨されることになっている場合もあります。ここで言う別の場所とは、寺院が管理している合祀墓であることが一般的です。
気になる永代使用料ですが、公営の場合は20万程度、寺院の場合は50万円~100万円と、これまた寺院運営の方が割高になりますが、その分定期的な供養の有無など、提供されるサービスが異なります。
○自然葬
よく聞かれるようになった「海洋散骨」や「樹木葬」がこれにあたると考えられます。
海洋散骨は、遺骨を海にまくことで、それ以外には墓などを設けることはせず、自宅の仏壇で供養を続けるスタイルになります。
海洋散骨の場合は、遺族が船に同乗して移動し、海に散骨をするので、船のチャーター費用などが必要になりますが、一般的な業者であれば1日10万円程度で船のチャーター費も含めて海洋散骨を請け負ってくれます。
また「樹木葬」は、墓石を置く代わりに桜など故人の好きだった木を植えてモニュメント代わりにして供養していく形式で、個別に好きな木々を植える場合と、大きな木が既にある場所に、納骨スペースだけを借りて納骨するパターンの2種類があります。
樹木葬も墓石を設置するよりは安価で使用できることが多く、寺院の霊園の場合は20万円~50万円の永代使用料で利用が可能になっているようです。
ちなみに、これらの埋葬方法は法律に違反するのかと言えば、それぞれの方法で状況は異なります。
まず海洋葬の場合、法律で禁止されていないため、行ってもいいともいえず、かといっておこなってはいけないとも言われていない実情があります。厚生労働省がガイドラインとして平成19年に指針を示していますが、禁じているものではなく「周辺の環境に悪影響を及ぼさない範囲で宗教的慣習として行えば問題ない」と位置付けています。
自然葬については、いわゆる収骨スペースがある樹木葬の場合は問題がないものの、骨を地面に撒く「散骨」の場合は、その解釈が分かれます。散骨をすることで周辺の環境に悪影響を及ぼす場合がある可能性もあり、北海道の一部の自治体は条例(=自治体の決まり)で散骨を禁止している事例もあります。
○永代供養
永代供養とは、寺院に遺骨を預けてその管理を永久にお願いする形式のことですが、そのサービス内容を聞いてみると、寺院が管理する納骨堂や合祀墓への納骨であることが多いです。
納骨堂や合祀墓と言っても、ユーザーに伝わりにくいことから、寺院サイドが利用者を増やすためにわかりやすい「永代供養」と言う呼称を使っていることが多いようです。
墓の管理や墓じまいで困っている人にとっては、永代供養と聞けば、永久にお寺が遺骨の面倒を見てくれると解釈しやすく、今後もこのような呼称が一般的に用いられるものと考えられます。
あと、永代供養と言う名称ではあるものの、寺院が管理する墓地内の使用者に対して、除草などの清掃や定期的な供養のサービスを提供するという意味で「永代供養」と銘打っている場合もあります。この場合の費用は、だいたい10万円~100万円くらいのようで、墓地の面積にもよるようです。
○ネット墓地
ネット墓地は、実際にある墓地にWebカメラを置き、インターネットを介してカメラを操作し、遠い場所からでも参拝できるサービスのことを差します。
ネット墓地であれば、好きな場所から、パソコンやスマートフォンの画面に表示されたお墓を参拝できるので、墓参が難しい遠方の人や、歩くことが難しい高齢者にとっては、便利と言えるでしょう。
さらに、希望すれば参拝中に住職が読経をしてくれたり、焼香をしてくれるので、ユーザーからすればお墓へ足を運んだ時と同じ感覚を体験することも可能です。
また、墓参に限らず、法要や法事も同様の方法で行えるサービスを提供している寺院もあります。
2 お墓に関するトラブル
いっぽう、お墓に関するトラブルも増加しています。今起きている具体的なトラブルをご紹介しましょう。
○無縁墓
無縁墓は、墓参する人がいなくなって荒れ地になったり、そこに草や樹木が茂ってしまう状態になってしまうことです。
無縁墓で影響を受けるのは、無縁墓の周辺の墓地の使用者です。自分の墓まで木が茂ってきたり、草が伸びて生えてしまうので管理の手間が増えてしまうからです。
また、人気の多い霊園の場合、無縁墓があればそれを撤去して新しい持ち主に使わせてあげればいいものの、無縁墓の使用者を調査することに時間がかかるなどの事情で、新しいユーザーに墓所を提供することが難しい実情もあります。
○違法墓地
墓地は、国の法律「墓地埋葬等に関する法律」により、許可を受けた場所でなければ営んではなりません。また、許可申請ができるのは自治体か宗教法人に限られています。
ですが、中には違法に墓地を造成して販売している事例もありますし、宗教法人が名義貸しをして仏壇電や石材店に実質的な販売の権限を与えているようなケースもあります。
さまざまなケースがありますが、許可を得ていない違法墓地が一番の問題です。購入したユーザーは違法墓地であることを知らないわけで、違法だから移動させなさいと言われても寝耳に水です。
ですから、購入する際には自治体から許可を得ているのかどうかを確認する必要があります。許可を得ている墓地の場合は「○○指令第○○号」などと、許可番号を広告に明記しているはずですから、その許可番号が正当な番号であるかどうかを自治体の墓地担当課に問い合わせれば確認が可能です。
○権利のトラブル
個人が所有していた墓地の権利は、その子孫などに引き継ぐことが可能ですが、子孫の中で権利を争うケースが増えています。
中には、他の親族に相談をせず勝手に権利を小計していたことで、親族間のトラブルに発展している場合もあります。
私が実際に携わったケースでは、公営墓地の使用者を亡き父から実際に墓の管理をしていた次男に引き継いだところ、東京にいる長男が「自分の入る墓がない」と次男への承継を違法として裁判になった事例があります。
裁判では、実際にそのお墓を管理している状況や、仏壇など供養全般を誰が行っているかが焦点となり、実際にそれらを行っていた次男への墓地承継は合法と認められました。
このように、墓地の権利に関するトラブルは今後も増えていくものと思われます。
3 まとめ
墓地事情は年々変化を遂げていますが、その根底には「墓地の管理がおろそかになる」「墓地の管理が面倒くさい」などと、将来的に墓地の管理ができないことを不安視している部分があります。
とはいうものの、墓参りをして先祖に感謝するという習わしそのものが衰退していることも否定できません。
日本人ならではの良い風習であると個人的に思うのですが、墓の管理を効率よくしようと思うばかり、本当に大切なことまで放棄するような時代になるのは、正直言って寂しくもあります。