2020-04-04
空き家を民泊物件にすることは簡単にできるの?|行政書士の目線で解説
この記事の目次
2018年に法律が改正されて以来、空き家を活用して民泊を開業する選択肢が登場しました。
相続などで空き家を所有した人も多くなっている世の中、その活用法に苦慮している人にとって、民泊という新しい選択肢が生まれました。
そこで、空き家を民泊で活用する前に知っておくべきことや役に立つ情報をまとめました。
1 活用できる空き家には条件がある
民泊は、ホテルや旅館、民宿などとは違って、一般的な民家を最低限宿泊可能なスタイルにすることで希望者を受け入れて利用させることができる、新しい宿泊施設のスタイルです。
民泊を行うには、都道府県の担当課に申請し、許可を得なければなりません。
なお、許可を得るためには、建物の構造や必要な設備を整備しないと許可を得られない場合があります。具体的にはどのような条件を満たせば空き家を民泊場所として活用できるのか確認しましょう。
○条件を満たす空き家には基準がある
法律では、民泊場所として利用できる建物や施設の基準、運営する側の資格などが定められています。
まず、空き家を民泊として利用するためには、人がいつでも生活することができる空き家であることや、所有者や賃借人が実際に居住しているか、何らかの際には駆け付けることができることが基準となっています。
この条件で重要なのは「人が住むことができる家」です。ボロボロの家をあてがわれて利用者がトラブルになることを防ぐためです。
実際、空き家を倉庫や作業場として使っている場合もありますが、この場合は人が住んでいるとは認められませんので条件を満たしたことにはなりません。
また、法律以外に、民泊に関して条例を定めている自治体もあります。観光地などを抱えている自治体では、周辺住民への配慮や生活環境の悪化を防ぐために、国の基準よりも厳しい基準を条例で定めていることがあるので、申請前にあらかじめ確認しておきましょう。
○年間の営業日数が一定日数以下であること
法律では、1年間の営業日数が180日以下になるよう定められています。これ以上の日数で営業したい場合は「旅館業法」による許可を得なくてはなりません。
ホテルや旅館などは、しっかりと施設や設備を整え、宿泊客を満足させるためのサービスを提供して宿泊業を営んでいますが、民泊はそれよりも簡素で、さーびずはほぼ皆無と言っていいほどの宿泊サービスであり、安さを売りにしていることから、ホテルや旅館の収益を圧迫しないように錆分けがされているのです。
○消防用設備を設置している空き家であること
宿泊のために用いる建物は、その面積や設備に応じて消防用設備を備えなくてはなりません。消防用設備とは、消火器やスプリンクラー、非常階段や避難経路を知らせる誘導灯など、火災になった時に安全に宿泊者が避難できるために必要な設備のことを言います。
旅館やホテルは、その建物の大きさや「旅館業法」と言う法律にも定めがあるため、消火器やスプリンクラー、非常階段などを必ず設けなくてはならないことになっています。
ですが、民泊に用いる空き家は建物が小さく、かつ旅館業法にあたらないため、必要最低限の消防用設備を備えればよいだけになっています。具体的には、消火器や避難経路の明示を行えばよいことになっています。
消防用設備は、定期的に消防署の査察を受けなくてはなりませんが、査察に合格しないと建物の使用を禁止される場合もあるので注意が必要です。
○建築基準法に適合している空き家であること
建築基準法は、自身や災害などを経て基準が強化されるなど、時代ごとに見直しがあります。実際に、東日本大震災以後には耐震基準が見直されて建築基準法も一部改正されています。
空き家で民泊を行う場合は、現行の建築基準法に適合する建物であることが必須条件となります。そのため、建築から経年劣化が進んでいるような古い空き家になると、耐震基準が不適合になっていることも多いです。
それでも民泊を行おうとすれば、耐震補強を行うなど、空き家にある程度手入れをしないとそれは難しいです。
耐震補強にかかった費用をその後の民泊で取り返すことができればいいのでしょうが、需要が見込めない場合には民泊としての利用をあきらめる方がよいかもしれません。
2 民泊場所として適した空き家の特徴
空き家であれば、どんな建物でも民泊に活用できるとは限りません。これから紹介することを踏まえて本当に民泊に適した建物かどうかを確認しましょう。
特にこだわりたいのは、宿泊者が快適に過ごせる環境を提供できるかどうかです。お客を誰に、どのような年代をターゲットにするかで、環境の作り方は変わってくるでしょう。
○トイレ
現代社会において、若い年代の日本人や外国人の利用者を見込むなら、トイレが洋式であることは譲れません。
トイレは、外国人観光客はもちろん、日本人観光客であっても洋式でなければ民泊で泊まってくれません。
ウォシュレットがあればより清潔な環境を提供できるので、利用者が増えることが見込まれます。
民泊の性質上、トイレは共用で使用することになりますが、せめて「男性用」「女性用」と性別ごとにトイレを分けて使うことができれば、女性の利用者が増加するでしょう。
○浴室
トイレと同様に、浴室も洋式の方がよさそうです。
外国人観光客はそもそもシャワーを使うことが多いのですが、足を伸ばせる浴槽があれば、旅の疲れを癒すことも出来、利用者も多くなります。
浴室を複数用意することは難しいでしょうが、時間別に男女の利用を制限するとか、利用している人が内側から鍵をかけることができるなど、安心して浴室を利用できる環境づくりは必須です。
○キッチン
自炊用のキッチンがあれば、バックパッカーなどの外国人利用者は増加します。その他、日本国内を旅する自転車やバイクの旅行客も増加するでしょう。
調理器具、電子レンジ、食器などが共用でも利用することができれば、節約旅行をしている人たちには喜ばれます。
また、冷蔵庫も必要なアイテムです。部屋ごとに個別に用意する必要はありませんが、みんなで共用できる大き目の冷蔵庫をキッチンにおいておけば利用しやすいでしょう。
○プライバシーが確保できる寝室
寝室などでのプライバシーが確保できる間取りも重要です。
民泊利用者には、家族連れの場合もあれば、一人旅をしているバックパッカーのような人もいますが、どんな旅であっても、プライバシーを確保できる環境は必要不可欠でしょう。
特に寝室は、プライベートスペースとして提供できることが望ましいです。部屋に仕切りを入れることができなくても、ベッドの中が見えないようにカーテンを付けるなどのプライバシーへの配慮が可能です。
ベットでは狭くて着替えが難しい場合は、別に男女別の更衣室を用意するなど、できる限りプライバシーに配慮した環境を整えておく方が利用者も安心できます。
○レンタサイクル
観光地の場合は、レンタルで利用できる自転車(レンタサイクル)などを備えておくと、近所への買い物や観光地巡りなどに活用してもらえます。
民泊の場所が、観光地である場合にはぜひ備えておきたいサービスです。
その他、近隣の駅までの送迎サービスなどもおすすめです。こうすることで、外国人観光客の増加を見込めるからです。
○Wi-Fi
インターネット環境を提供すれば、外国人利用客は格段に増加します。
また、旅行系Youtuberと呼ばれる人たち向けに、通信環境を提供すればその分利用者も増え、いい口コミを広めてくれるので営業活動をしなくても顧客の確保につながります。
ただし、SSIDなどは適宜変更するなど、Wi-Fi環境を悪用されないようにするなどのセキュリティ対策は必要不可欠です。
3 民泊開業前の準備
民泊に関する法律ができたきっかけは、民泊を行っている民家とその周辺住民とでトラブルが相次いだことからです。
民泊の利用者が外国人観光客の場合、特に周辺住民とのトラブルは多いです。
例えば、自治体のルールを守らずにごみを捨てたり、他人の家に間違えて入ってしまう事、夜まで騒いで近隣の民家に騒音被害を与えてしまうなど、民泊が絡んで起きるトラブルはたくさんあります。
そのため、民泊の経営者としては、宿泊者に対してマナーを守るように徹底する必要もあるでしょう。
実際、利用者はホームページを見て場所を決めることが多いですから、ホームページに禁止行為を掲載しておき、事前に了解を求めることは必須です。実際、民泊を続けていくためには、周辺住民とのトラブルは絶対に避けたいものです。
そういう意味では、周辺住民への周知は必須です。どのような規模で、どのような対象者が利用するのかをあらかじめ周辺住民に示して理解を求めることです。
もちろん、民泊への反対もあるかもしれませんが、具体的な対応策を示すことで、理解を求めて営業できるようになることが何よりです。
例えば、騒音を気にする場合には騒音を緩和するカーテンを設置したり、シャワー音などが騒がしくならないように利用時間を制限する、
英語だけでなく様々な言語で注意書きをするなど、運営者の意図が伝わるように対策を講じることで、周辺住民の理解を得ることも可能です。
4 まとめ
民泊は空き家の有効活用方法の1つではありますが、事業としてはやはり黒字で経営したいものです。
そうする場合、旅行者が「使いやすい」「泊まりやすい」と言う視野に立って考えてみるとその答えは出てくると思われます。
まず、民泊はあくまで既存の空き家を活用するのが前提ですが、個人のプライバシーを確保できるようにしておくことは必須です。
最近の旅行者が民泊に求めているのは、宿泊にかかる費用が「安い」ことと「プライバシーが確保されていること」です。
どのタイプの旅行者に向けて民泊を経営するかを決めると、それらのニーズに対応できるサービスを提供することもできますし、利益を追求できるようなサービスを提供することも可能でしょう。