2020-04-04
エンディングノートの選び方&書き方とは?終活アドバイザーが伝えたい!
この記事の目次
エンディングノートは、ここ数年でその名前や意義が知られるようになってきた、終活には欠かせないアイテムの1つです。
私も仕事柄、相続に関するお手伝いをさせていただくことが多いのですが、その際にエンディングノートを一緒に作成される人も多くなっています。
では、エンディングノートは実際にどのような流れで作ればよいのでしょうか。
1 エンディングノートの意義
エンディングノートは、自分の死後に関わってくることについて、その希望を遺族などに伝えるため、生前にあらかじめ作成しておくものです。
具体的な希望としては、次のようなことが挙げられます。
- 葬儀
- 埋葬
- 友人等への連絡
- 相続
- 身の回りの物の処分
あと、エンディングノートは自分の希望のみを書き記すものだけではなく、生前お世話になった人々へのお礼を書き綴るためのものでもあります。
普段は「ありがとう」と言いづらい関係であっても、落ち着いて人生を振り返る中で、お世話になった人の顔が浮かんでくるでしょうから、言葉にしたためて生前の感謝の気持ちを残しておくのもよいと思います。
また、エンディングノートを残しておくのと残しておかないのとでは、遺族の負担が明らかに変わってきます。
葬儀、埋葬、相続など、故人が亡くなって以降、遺族はさまざまな手続きを限られた時間でこなさねばなりません。
その時、故人しか知りえない情報を探す時間すらない場合もありますが、エンディングノートがあれば故人に関するすべての情報が網羅されており、遺族の負担を軽減することが可能となります。
行政書士としての立場で申し上げると、エンディングノートの作成は「ぜひお願いしたい」のが本音です。
お亡くなりになった後に、私どもが委託を受けていろいろな調査を行えば必要な情報は得られるのですが、それらにかける時間を節約できるとご遺族の金銭的な負担が軽減されるのです。
例えば、相続に関して相続人を調べようとした場合、行政書士は戸籍謄本を徴収して対象者を調べて家系図を作成しますが、証明手数料も馬鹿になりません。
これがエンディングノートに記載してあれば、証明手数料や証明取得のために私たちが市役所などを訪問する際の費用も節約できるのです。
戸籍謄本は1通300円程度ですが、これが複数枚用意するとなればあっという間に5千円近くの費用が掛かってしまいます。
これを安いとみるか高いとみるかは人ぞれぞれかもしれませんが、節約できる部分はしっかりと節約していただけるとよいかと思います。
2 エンディングノートの記載内容
エンディングノートは、遺言書と違って法的効力はないこともあり、正式な書き方は決まっていません。
そのため、市販されているエンディングノートもあれば、インターネットで様式をダウンロードできるものもあり、自分が使いやすいものを手に入れて活用すれば問題はありません。
そもそも、エンディングノートを書く目的は「自分自身の気持ちの整理」と「自分の死後に家族にかかる負担を減らすこと」です。
遺言書でない以上、直筆でなければならない理由はありません。エクセルやワードの様式にデータとして文書を作成しておくことでも十分対応できますし、
文字を書くことが困難な場合は、録音や録画しておくことでエンディングノートの代わりにすることも可能です。
最近はスマートフォンが普及したこともあり、動画でメッセージを残す人も多くなりました。生前の自分の姿を残しておくこともできますし、
家族やお世話になった人たちに肉声でメッセージを残すこともできるからです。また、動画データは電子メールに添付したり、LINEやインスタグラムなどで共有することもできるので、多くの人々に自分の思いを伝える方法としても適していると思います。
私がおすすめするエンディングノートの記載内容は、次のようなものです。
- 本人に関する情報(生年月日や家族の記念日など)
- 購入に関する情報(マイホームや自動車などの購入日や保証期間など)
- 財産に関する情報(預貯金口座の詳細やクレジットカードの情報、年金や生命保険に関する情報、ローンや保証人に関する情報、公共料金等の名義に関する情報)
- 医療介護に関する情報(既往歴、医療や介護を希望する施設の情報、延命措置の有無など)
- 葬儀に関する情報(葬儀の形式や参列者に関する情報)
- 埋葬に関する情報(埋葬場所やその形式に関する情報)
- 愛用品に関する情報(愛用品の処分や贈与に関する情報)
- 人物に関する情報(財産管理を任せている弁護士や税理士等の情報、資産運用の担当者、事業主の場合は取引先の担当者など)
- その他(遺言状の管理場所、預金通帳の管理場所など)
これらの情報があれば、遺族が困ることはまずないだろうというのが私の経験から考えた結論です。
特に、複数の資産を有していたり、事業主である場合は情報がかなりの量になると思いますが、残された遺族の苦労を顧みて、できる限り詳細を残しておく必要があります。
また、エンディングノートは共通のものを1冊作成するのではなく、「家族用」「会社関係者用」などと、託したい内容によって複数のエンディングノートを作成することは問題ありません。
遺言状は、法的に有効なものであることを重視するため、必ず1枚のみ作成することとなっており、作成時には公証人など第三者の確認を得る必要があります。
一方、エンディングノートは法的な有効性を担保しなくてもよいため、内容や相手を選んで、複数作成しても問題はありません。
3 エンディングノートのメリット
エンディングノートは、その性質上、財産に関するさまざまなことを記載できます。例えば不動産や、生命保険、有価証券などのリストがあれば、遺族も相続の際に財産調査の手間を省くことができます。
また、エンディングノートは誰にどんな遺産を送りたいのか希望を伝えるためにも使えます。
ただし、エンディングノートには遺言書のように法的効力がないので、もし相続にあたってトラブルを招くような財産がある方は、財産に関することだけは遺言書を作成しておく方がよいかもしれません。
エンディングノートには、意外なメリットがあります。それは、自分が意識不明になるなどして、意思を伝達することや問いかけに反応することができなくなった時でも、自分の意向を伝えることができることです。
例えば、急な病気で意識を失った結果、死を迎える前に臓器移植を検討することもあるでしょうが、エンディングノートがあれば臓器移植の可否を伝えることができます。
その他、無駄な延命措置を拒否する場合にはその旨をエンディングノートに残しておくことで家族が延命措置を中止する判断を後押しすることができるでしょう。
生死をさまようような大病でない場合でも、一時的に面会ができなかったり、会話ができないなどの事情がある場合、
エンディングノートを活用すれば既往歴や投薬の有無、医療費の支払いに必要な財産の存在、生命保険の手続きなど、家族に手続きを代行してもらう必要のある案件でもスムーズに対応できますから、
ぜひこの機会にエンディングノートを作成されることをお勧めします。
特に最近は、新型コロナウイルス感染症により亡くなってしまう人もでてきましたが、意識の有無に関わらず、患者となった場合には近親者すら面会も不可能な状態になるため、
そのまま死を迎えることになってしまえば、あらかじめ必要なことを尋ねることもできなかった家族にとっては、その後の対応が複雑になってしまう可能性もあります。
天寿を全うする際、誰もが枕元に家族を呼び寄せて必要なことを伝えられるとは限りません。既往歴がある人や、将来への不安を持っている人は、ぜひエンディングノートを作っておかれるとよいでしょう。
あと、亡くなってしまった後の葬儀やお墓についてもエンディングノートに記しておくとよいでしょう。どのような葬儀を行って欲しいのか、自身の死を伝えて欲しい人や葬儀に招いて欲しい人などをリスト化しておくと遺族は大変助かります。
あわせて、埋葬される墓地の場所や墓石を建立する場合にはその形状なども、一緒に記しておけば自身の希望に添った供養が実現するかもしれません。
4 エンディングノートのデメリット
エンディングノートのデメリットと言えば、記載されている内容のとおりにさまざまなことが実行されるか不確実だということです。
遺言状の場合であれば、法律的に定められた遺言執行人を用意することもでき、遺言執行人が遺言状の内容に基づいて忠実に故人の希望を実行してくれますが、エンディングノートは法的根拠がないものですから、受け取った遺族がそれを実行するかどうかはわかりませんし、実行しなくても違法にならないのです。
ですから、確実に実行して欲しいことについては、遺言状を残しておき、遺言執行人を定めてその実行を任せることが一番です。
エンディングノートは、その作成方法などから考えると、気軽に作成できるものではありますが、その分改ざんの危険性もあることから、法的根拠を持たせられないものとされています。どうしても実現して欲しいことがある場合や、法律上のトラブルが起きる恐れがある場合は、ぜひ遺言状を作成しましょう。
5 まとめ
人にはそれぞれに生き方があるように、終活のスタイルも人それぞれです。
今の時代、エンディングノートが必要とされるのは、自分の人生の終わりを自分でプロデュースすることで、結果的に家族に負担をかけないことにつながるからです。
「断捨離」という言葉がはやったように、人生の終わりのことを考えて行動する人が増えてきました。不要な物事は整理して、後の代に負担をかけないようにするということが当たり前の考え方になりつつある今、エンディングノートはまさにその具体的な方法の一つなのです。
行政書士や、「終活カウンセラー」などの専門家にご相談いただくと、希望される終活についてその方法などをお調べして、相談者に適したエンディングノートを作成させていただきます。みなさんがお元気なうちに、ぜひ一度はエンディングノートについてご検討いただければ幸いです。