2020-04-04
感染症などの病気で亡くなると火葬してもらえないの?素朴な疑問を解決
この記事の目次
最近では新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていますが、コメディアンの志村けんさんが亡くなったときの対応がさまざまな不安や憶測を呼んでいます。
志村さんのお兄さんが語っていたことから推測すると、「死に目に顔も見られなかった」「再会できたのは火葬されて骨になった時だけ」
「棺の中を見ることもままならなかった」など、新型コロナウイルスにかかって亡くなった人のお別れについては、遺族として複雑な気持であったことが伝わります。
では、実際に感染症などの病気で亡くなった人の火葬が、どのように行われているのか、また亡くなってから火葬はしてもらえるのか、火葬までの流れについて紹介します。
1 新型コロナウイルスで亡くなった人の火葬は24時間以内でも可能
一般的には、火葬をしてもらうためには死亡日時より24時間が経過しないと火葬を執行してもらうことは法律上できません。
ですが、新型コロナウイルスに関しては「新型コロナウイルス特別措置法」により、24時間経過しなくても火葬をすることが特例として認められました。
これは、患者の遺体からの感染を防止するため、できるだけ早く火葬することを認めることで、遺体を感染源とすることを防ぐための措置です。
同様の措置はエボラ出血熱やSARSの時にも行われることになっており、国が新型コロナウイルスをどれだけ危険視しているかを表しているのです。
このように、ネット上でデマとなった「コロナウイルスで亡くなった人は火葬してもらえない」と言うのは明らかに間違いです。
ただし、自分の望む場所や時間帯に火葬してもらえないのは事実です。火葬までの流れについては後の章で詳しくご紹介します。
2 新型コロナウイルスで亡くなった人の火葬するときの流れ
それでは、新型コロナウイルスで亡くなった人を火葬する場合の流れをご紹介します。
これは、私が火葬場や自治体が発表している火葬の流れをいくつか調べて、一般的な流れをまとめたものです。
実際には、火葬場や自治体によって細かい部分の流れが異なることもありますので、実際にそのような事態に直面したときには、改めて確認をお願いします。
○病院で行うこと
亡くなるのはたいていの場合病院になります。
病院では「納体袋」と呼ばれる専用の袋へご遺体を収め、従事者が皮膚や体液に直接触れることがない処置を施します。
納体袋とは、中に入っている遺体から血液や体液が出てこないようにすることと、ウイルスなどが遺体の皮膚についている可能性もあることから、直接遺体の皮膚に障れないように物理的に対処するために用いられる、ビニールで作られている非透過性の袋です。
非透過性であるため、故人の顔が見られないことは志村けんさんが亡くなった時もお兄さんが語っておられましたが、一部の自治体や火葬場では透明の納体袋を用意して、遺族の心情に配慮する取り組みを始めているところも出てきました。
納体袋にご遺体を収めた後は、納体袋の外面を消毒します。これは、新型コロナウイルスで亡くなった人の遺体の火葬について、厚生労働省が指導している内容に準じた対応になります。
○葬儀業者にお願いすること
遺体を移動するには、霊きゅう車など遺体を移動させる専用車両を持っている葬儀業者に依頼することになります。
葬儀業者は、霊きゅう車により遺体の移動の他、火葬場の使用手続きの代行など、遺族が供養に専念できる環境を整えてくれますが、新型コロナウイルスの場合は供養よりも感染防止を優先せざるを得ないようです。
通常の場合は、葬儀業者の所有している式場などで通夜や葬儀を行い、そののち火葬場に移動して火葬することになります。首都圏など火葬場の空きがなかなか取れない場合は、葬儀業者の所有している遺体冷蔵庫で火葬予定日まで遺体を預かってもらうこともしばしば行われます。
ですが、新型コロナウイルスの場合は一般的な葬儀を行うことはほぼ不可能です。
基本的には、できる限り早く遺体を火葬場に移動させ、火葬して遺骨の状態にして遺族にお返しする「骨葬」を行うことになるでしょう。火葬が先でそのあとに葬儀と言う流れは、日本全国でも東北地方などで一般的に行われていますが、それ以外の地域ではあまり見聞きしない葬儀スタイルになります。
先に火葬するといっても、通常の亡くなり方であれば、顔を見てお別れもでき、大好きだったものを備えて葬儀もできますが、新型コロナウイルスの場合は顔を見るお別れもできず、棺の状態で見送るしかないのが実情です。
葬儀業者としても、遺族の意向に沿って葬儀を行いたいのですが、自社の施設や霊きゅう車なども消毒が必要となり、なにより自社の社員に感染リスクを負わせることを忌避する業者もあるでしょうから、遺族が依頼しても依頼を受けてもらえない場合もあり得るでしょう。
かといって、コロナウイルス関連の死者であることを隠し通すのは、無防備にご遺体に関わる人を増やすだけで、感染拡大を招く可能性を高めるだけですから、絶対にやめてください。
○火葬場で行えること
火葬場からは、遺族の中でも濃厚接触者及びそれに類すると思われる方々の来場はご遠慮いただくようお願いをされる場合が一般的です。その他、37.5度以上の発熱が続く等、体調不良者は来場不可となるケースが多いようです。
火葬の日時も、一般的な遺体の火葬とは違い、営業時間が終了した時間帯の中で、斎場が指定する日時に火葬を受け入れることになります。
火葬を実施される際も、遺族が全く立ち会えない場合があるかもしれません。濃厚接触者が来場できない結果、誰も火葬場に立ち会える人がいなくなってしまう場合もあり得るからです。その場合は、葬祭業者や火葬場の職員が代わりに収骨(お骨拾い)をする場合もあります。
基本的に、遺体に納体袋が使用されていること、納体袋の外面の消毒などがなされていること、搬送従事者やご遺族、火葬従事者の感染防止策が適切に講じられていることが確認できれば、一般的な火葬の行事を行うことは可能となっています。これは、厚生労働省のホームページにも掲載されているので、気になる人は確認してみてください。
とはいうものの、火葬場はさまざまな市民が来場する場所であり、クラスターを引き起こす場所になってはいけないため、運営者側もかなり慎重に対応することが基本になります。「そこまでやるか?」と思うぐらいのルールを提示してくる場合もあるでしょうが、やはり公共施設を経由した感染拡大は避けるべきですから、多少の我慢は必要になってきます。
3 遺族が特に気を付けるべきこと
遺族が最も気を付けるべきことは、自身が濃厚接触者であることを自覚することです。発症より故人と接触がある場合は、自分が濃厚接触者であると考えて、2週間程度自主的に対人接触を避けて感染拡大を防ぐことを優先しましょう。
その場合、火葬など故人を見送る行事に参加できないことは事実です。ですが、故人を悼むことは地震やその家族が元気になっていれば、いつでも自分たちの望むままに行うことができます。
無理をしてしまうと、自分やその周りの大事な人を新型コロナウイルスに感染させてしまうかもしれないのです。自身が結果的に罹患していなかったとしても、今は「罹患しているかもしれない自分」をイメージして、さまざまな対策を実践することです。
また、遺族としては形見の品などを親族等に分けてあげたりしたいものですが、故人がいつの時期までそれを使っていたかによっては、接触感染の引き金になってしまう可能性もあります。どうしても差し上げたい形見の品がある場合は、消毒してから差し上げてください。
その他、故人が直前まで暮らしていた部屋やそこにある道具、故人が運転していた自動車などは、一定の期間が経過しないとウイルスがそこに残っており、関わった人が感染してしまう危険性があることは自覚しておいてください。
4 特別な対応にも受け入れる気持ちを
少しでも故人を穏やかに送ってあげたいと思う気持ちは、どの遺族でも考えることです。
ですが、新型コロナウイルスにより無くなってしまった場合、特別な対応を目の当たりにします。
一番驚くのは、遺体に関わる人々がかなり重装備で対応することです。葬祭業者や火葬場の職員も感染しないように対応しますから、まずご遺体に直接触れないようにふるまいます。
職員の感染防止策として、マスクやゴム手袋、ゴーグルや防護服の着用を基本としている火葬場もあるようです。イメージとしては、福島第一原発の事故以降現地で作業している人々が特殊なビニールを全身に身に着けて作業を行っている、あのような状態の人たちが遺体を取り扱うと考えてくださればよいと思います。
なんだかバイ菌を扱うような対応に悲しい気持ちになることもあるでしょう。ですが、新型コロナウイルスは感染力の強いウイルスのため、ここまで対応しても感染するリスクを0%にすることはできないのです。
今は仕方がない、こう考えて特別な対応も受け入れる気持ちを持ってもらえると考えるのは、私の個人的な見解でもあります。
5 まとめ
新型コロナウイルスで亡くなった人の火葬は、厚生労働者が定めているガイドラインにも示されているように、ご遺体に適切な感染防止策が講じられていることが前提にはなるものの、一般的な葬儀や火葬を行うことは問題ないことになっています。
とはいうものの、感染拡大を懸念する風潮もあるため、葬儀や火葬の際には個人と濃厚接触している者や、濃厚接触者とみられる人の来場を自粛するように求められることが基本となりつつあります。
遺族として、故人を丁重に送ってあげたい気持ちがあるのは十分わかります。ですが、今は新型コロナウイルスの感染拡大を少しでも阻止することが必要不可欠なのですから、多少の不便さや違和感は我慢してもらわざるを得ないのかもしれません。